＊ほんのやま ページ29
「おはよー……わ、なにこれ」
起きてきたマサが、リビングを見て目を丸くした。
それはそうだろう、昨日までなかった大量の本が積み重ねてあるのだ。
「おはよ、マサ。散らかっててごめんね」
サトがそう苦笑すると、マサは首を横に振る。
ユキはまだ起きていない。
「いいけど、これ何？ 本？」
「うん。サクたちが乗ってたものから持ってきたの。サクたちの本だって」
「へー、そうなんだ。あれ、ってことはサトちゃん、あの白いやつのところに行ったの？」
マサが目を丸くする。
「うん。サクが行きたいって言うからね。ついでにサクたちの惑星について話を聞いてたの」
ふわあ、と一つあくびをする。
結局寝ることはできなかった。
今日、学園に行く用事がなかったことだけが救いだ。
机の上に広げたままの紙と本を、マサが覗き込む。
「宇宙の研究？」
「研究っていうほどのものでもないけど……いろいろ調べてた。サクたちがいた惑星、僕たちの惑星とはかなり違うみたい」
櫻井は本を広げながらいろいろ説明してくれたが、そもそも文字が読めない。
読み上げながら教えてくれていたものの、挿絵も少なく、言語通訳がうまく働かない言葉が多かった。
その度に止まり、サト自身も言葉の意味をメモしながら聞いてはいたものの、なかなか難しい。
櫻井が持っていた本の数ページ分しか、話は進まなかった。
櫻井が寝に行ったあとも、サトは自分が持っていた本と櫻井が言っていた内容とを照らし合わせていた。
気づいたら夜は明けていて、マサが起きてきたのだ。
要するに、徹夜だ。
「この、サンソってなに？」
「サンソ？ あぁ、酸素か」
マサが指差している場所を見て、納得をする。
自分も聞いたことがなかったのだ。
マサは余計に知らないだろう。
「サクが言ってたの。人間だけじゃなくて、生きてるものはみんな酸素が必要なんだって。でも宇宙空間には酸素がないから、そのまま宇宙に行くことはできないんだって」
マサは首を傾げる。
「ニンゲン？」
サトは苦笑した。
櫻井に話を聞いているときの自分と同じだ。
こうなるから、話が進まない。
「人と同じ意味みたいだよ。ちゃんというとなんか違うみたいだけど、もう同じだってサクは言ってた」
「へー、不思議な言葉があるんだね」
惑星が違えば、常識というのもまったく違うらしい。
櫻井の話を聞いていて、それを痛感した。
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2021年2月15日 22時
