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「んっ、..た、やっま、」
有無も言わせず、先ほどの感触を味わうように唇を啄む。
漏れる藤ヶ谷の吐息、俺の名前。俺を興奮させるのに十分だった。
藤ヶ谷が好きな俺には都合が良かった。
部屋に響く、リップ音に聴覚でさえ犯されていく。
吐息を零す隙に舌をねじ込めばびっくりした顔をするも、自らも絡めてくる藤ヶ谷。
自分から攻めたくせにとろけそうなくらい甘いキスに溺れ
いつからか逆転しては、藤ヶ谷の手が服の中に侵入してくる。
「....ん、藤ヶ谷っ、」
唇を離しても尚互いが銀の糸で繋がっていた。
見つめ合う時間はほんの数分なのに、何時間にも感じられるほど長くて。
互いに体を起こし、言葉を交わすことなく、寝室に案内されてはベッドに寝転んだ。
覆いかぶさる藤ヶ谷をわざと誘うように首に腕をまわす。
ニヤッと口角を上げた藤ヶ谷はまた唇を重ね、甘い時間が流れた。
+++
「っん、あ、ふ、じがあ、やっんん、っ」
「きたやま、っあ、」
俺の体をぎゅっと抱きしめて果てる藤ヶ谷に、不覚にも愛情をもらった気がした。
はずだったのに、すぐ俺から離れては
「悪い。」
とだけ残して部屋を去った藤ヶ谷。
ああ、完全に俺って、埋め合わせだったんだ。
自分から提案して仕掛けたくせに、事後で悲しくなるなんて馬鹿らしい。
人のベッドで、女を抱いたであろうベッドに寝転んでいる自分が虚しくて、
脱ぎ捨てた服を着れば、部屋を出た。そこには藤ヶ谷の姿はなく、シャワー音がしていた。
何時かわからないがカーテンから見える世界は真っ暗で、携帯を見れば忠くんから数件の着信とメッセージが。
『今から帰るわ』
と返事を返していると、腰にバスタオルを巻き、髪をわしゃわしゃと拭きながら出てくる藤ヶ谷。
まだ居たの、と言わんばかりの鋭い視線。先程まであれほど甘い声で俺の名前を呼んでいたのに。
気まずい空気が流れる中で、「帰るわ」とだけ残し、藤ヶ谷の家を出た。
「・・・たやま」
そう、藤ヶ谷が呼んでいる声は聞こえるはずもなかった。
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作者名:妖狐 | 作成日時:2019年10月19日 0時