検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:30,172 hit

15★ ページ16

「んっ、..た、やっま、」

有無も言わせず、先ほどの感触を味わうように唇を啄む。
漏れる藤ヶ谷の吐息、俺の名前。俺を興奮させるのに十分だった。
藤ヶ谷が好きな俺には都合が良かった。
部屋に響く、リップ音に聴覚でさえ犯されていく。


吐息を零す隙に舌をねじ込めばびっくりした顔をするも、自らも絡めてくる藤ヶ谷。
自分から攻めたくせにとろけそうなくらい甘いキスに溺れ
いつからか逆転しては、藤ヶ谷の手が服の中に侵入してくる。


「....ん、藤ヶ谷っ、」

唇を離しても尚互いが銀の糸で繋がっていた。


見つめ合う時間はほんの数分なのに、何時間にも感じられるほど長くて。
互いに体を起こし、言葉を交わすことなく、寝室に案内されてはベッドに寝転んだ。


覆いかぶさる藤ヶ谷をわざと誘うように首に腕をまわす。

ニヤッと口角を上げた藤ヶ谷はまた唇を重ね、甘い時間が流れた。



+++



「っん、あ、ふ、じがあ、やっんん、っ」

「きたやま、っあ、」



俺の体をぎゅっと抱きしめて果てる藤ヶ谷に、不覚にも愛情をもらった気がした。
はずだったのに、すぐ俺から離れては


「悪い。」


とだけ残して部屋を去った藤ヶ谷。


ああ、完全に俺って、埋め合わせだったんだ。
自分から提案して仕掛けたくせに、事後で悲しくなるなんて馬鹿らしい。


人のベッドで、女を抱いたであろうベッドに寝転んでいる自分が虚しくて、
脱ぎ捨てた服を着れば、部屋を出た。そこには藤ヶ谷の姿はなく、シャワー音がしていた。
何時かわからないがカーテンから見える世界は真っ暗で、携帯を見れば忠くんから数件の着信とメッセージが。


『今から帰るわ』

と返事を返していると、腰にバスタオルを巻き、髪をわしゃわしゃと拭きながら出てくる藤ヶ谷。
まだ居たの、と言わんばかりの鋭い視線。先程まであれほど甘い声で俺の名前を呼んでいたのに。
気まずい空気が流れる中で、「帰るわ」とだけ残し、藤ヶ谷の家を出た。






「・・・たやま」




そう、藤ヶ谷が呼んでいる声は聞こえるはずもなかった。

16→←14



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
298人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:妖狐 | 作成日時:2019年10月19日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。