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『今日遅くなるわ』と忠くんに連絡を入れ、事務所の人に事実ではあるが彼女ではない旨を伝え、今日は帰らされた。
「こっち」と言わんばかりに先に歩く藤ヶ谷を追いかけては、藤ヶ谷の車に乗り込む。
初めて乗ったかも、だなんてのんきな思考が巡るが、始終無言を貫き通す藤ヶ谷を見てはまた窓の外を見た。
+++
ガチャ
「・・・お邪魔します」
「ん」
甘ったるく、どこか忠くんと似ている匂いが鼻を掠める。
「そこ座ってて。」
「おう」
言われた通りにソファにかける。
冷蔵庫に向かった藤ヶ谷は、水を取り出しては俺に渡した。
「引っ越してから、藤ヶ谷の家来るの初めてだな。」
無言の空間が耐えられなかった俺は少し笑いながら口を開いた。
「渉以外、来たことない。」
それほど広くないソファだけど細い藤ヶ谷は一人分も幅をとることがなく、
少し距離をあけて俺の横に座った。
また、横尾さんか。
忠くんと居た日々は仕事に行っても、メンバーのことをあまり見てなかった。7人の仕事でもメンバーと話すことも減り、飯を誘われても今日はと断り続けていたら、ついに誘われなくなった。
今日も家に帰れば優しく包み込んでくれる忠くんがいる、と思いながら、現実から目を背けていた。
本人の口から久しぶりに聞いた、名前に少し心が痛む。ああ、そういえば横尾さんを好きとか、どうとか。
心が痛む自分に、まだ藤ヶ谷のことが好きなんだと思い知らされる。
「そういえば、なんで家呼んでくれたの?」
藤ヶ谷を見ようとしたが、次に視界に写ったのは、藤ヶ谷と、天井だった。
一瞬の出来事に何があったのか頭が追いつかないが、段々近づいてくる藤ヶ谷の顔に、押し倒されたことをやっと理解した。
「・・ん、」
抵抗する間も無く重なった唇に、感情が溢れそうになる。
自我を保とうと、藤ヶ谷を押し退け「何してんだよ・・」
と気持ちを悟られないように冷たくはなってしまう。
「大倉くんの、匂い、」
「・・・悪いかよ」
悲しそうな顔をする藤ヶ谷に少しイラつき、反抗の意を込めて言えば、また悲しそうな顔をする。
「お前だって、横尾さんも、女もいるだろう?」
続けていえば藤ヶ谷、はあとため息をつき「もういい」と離れる。
感情は溢れさせたくないのに、意に反して藤ヶ谷を押し倒しては俺が馬乗りになった。
「女で、欲求満たして撮られるくらいなら、俺にしとけば」
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作者名:妖狐 | 作成日時:2019年10月19日 0時