【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -20章- 始まるDRB予選 (ページ10)

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990話彼女だけに許された特等席ページ10

それから左馬刻は理鶯を野営地に繋がる山で降ろし、自宅へと辿り着く。勿論車を降りてからでも頑なに荷物をAに渡さなかったので、一緒に荷物を持つ理鶯曰く“仲良しさん”状態で部屋に入った

Aと左馬刻の2人で材料と道具を冷蔵庫やキッチンに片付けた後、左馬刻の提案でリビングのソファでゆっくり寛ぐ。

筈だったのだが………────。

『左馬刻さぁーん、何で私ここに座らされてるんですかぁー？』

｢別に良いじゃねぇか。お前しか座らせねぇ特等席だぞ｣

『いや隣空いてるんですけど、普通横並びじゃないんですか？』

広めのソファなのにも関わらず左馬刻は自身の太腿の上にAを座らせ、後ろからバックハグを決めている。身動きも取れないがっちりホールドにAは藻掻くが、男の力に勝る訳が無い。余計に力を入れさせてしまい、彼との距離が近くなった

｢動くんじゃねぇ。お前、あのウサギのぬいぐるみ野郎にもそうしてんだろうが｣

『ぬいぐるみ野郎じゃないですラビ君です。それとラビ君を抱き締めようものなら理鶯さんに“小官がいるのにも関わらずその兎を構うのか”とガチトーンで言われますから、そんなに抱き締められてないです』

｢ハハハッ、アイツ独占欲強ェな｣

この場にA以外の誰かがいれば間違いなく“お前が言うな”と飛んでくる事だろう。だからこそ左馬刻は大きな声で言えたのである

｢ま、今日の俺様はお前をこうしたい気分だから諦めろ｣

『暴論！？』

彼の言葉は本当だ。
この前の一件があったから寂しくなったとか、後悔があって求めてしまうとか、そんな理由でAをハグしている訳では無い。何となくだ

自分勝手な暴論にAは思わず声を上げるが、それで解放される事は無い。彼の言う通り諦めて大人しくなった
───と言っても彼女自身、左馬刻の存在がとても近く感じられるので落ち着く。なので諦めたというより受け入れたと言った方が近い

テレビも点けず、暫く静寂に包まれたリビング。テレビのリモコンへ手を伸ばせない程拘束されているA。彼女からは左馬刻の表情は窺えない。ただリラックスしている呼吸だけが聞こえる

不意にAの左肩に重みが伝わる。それが左馬刻の頭だと気づくのに時間は掛からなかった。その後続けて背中にまで体重が掛けられてきた

｢すぅ……すぅ……｣

規則正しい寝息が彼女の耳を擽る。どうやら寝てしまったようだ

『え、えぇ……！？』