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1002話 ディスる事が全てでは無い ページ22

それから彼女とヒプノシスマイクについて話を続けていた

雑誌では小官達含め、決勝トーナメントに来るであろう強豪チームのラップスタイルや予測されるアビリティが載っているらしい。彼女は小官を待つ間にそれを見て、ぬいぐるみに話し掛けていたとの事

恐らくその雑誌は中王区の者が書いたのだろう。情報が一般人の下に流れてしまうのは気に食わないし見過ごせない事態だ。今更動いたところで無意味ではあるが


『そもそも相手をディスる?と言う事が出来ないのでヒプノシスマイクを使いこなせないと思いますがね』


Aはぬいぐるみにギュ……と力を入れて苦笑いを浮かべた。彼女にヒプノシスマイクを使わせないつもりではあるが、向上心を壊してしまうのは不本意だ。小官は彼女の目を真っ直ぐと見て、思った事をそのまま口にする


「いいかA、ヒプノシスマイクは相手を攻撃する為だけの物では無い。仲間を護る、仲間の傷を癒す、相手を行動不能状態にする、相手を惑わす。これらがマイクの攻撃手段。貴女の優しい言葉も立派な武器になれる」

『っ、理鶯さん……』

「相手を傷付ける行為が苦手なら、周りに任せればいい。小官がそれを喜んで請け負おう。小官は貴女の剣だ」


貴女は強い。強いが、それ以前に小官が護りたいと強く思える尊い存在だ

護られてばかりで憤る気持ちがあるのかもしれないが、それでも貴女に戦いの場にいて欲しくはない。その場に赴き戦うのは軍人であり、あの日護りたいと思った小官の役目

言葉にせずとも思いが溢れ、小官の手は尊い者の頭に乗せていた。壮絶な環境を生き延びたと思わせない絹糸の様なサラサラとした髪、『ありがとうございます……』と嬉しそうに漏らす音、照れくさそうに笑う顔。全てが庇護欲を掻き立てられる


「さて、小官はこれから弁当を作ってくる。Aはどうする?」

『そうですね、私はここでラビ君と一緒に作ってる理鶯さんを見てますねっ!』

「ふふ、了解した」









─────人に作る弁当というのは考える事が多く、難しいモノだった。限られた入れ物の中でバランスよく、そして満足のいく量にするのは中々に頭を使う

試行錯誤を重ね、納得のいく弁当が仕上がった頃には太陽は真上に登っていた。小官とした事が熱中してしまい時間感覚が狂ってしまうとは……。
待ち続けて暇だったであろうAに謝罪の言葉を口にすると、ぬいぐるみの左手を横に振りながら『大丈夫デスヨ〜』と可愛らしく返してくれた

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時

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