932話 似たリアクションの3人 ページ2
「じゃあAは少し下がって見ててくれ。と言っても二郎程上手くもねぇし、もしかすると失敗するかもな」
ハハハッ、と明るく笑う一郎。その横に立つ三郎の顔と言ったらこの世の終わりのようなモノだった
真反対の表情の2人に対し、Aは戸惑いながらも『分かりました!頑張ってください……!!』と拳を上げ精一杯のエールを送る
「じゃあ兄ちゃん行くよ!!」
心做しか嬉しそうな二郎は大きな声で一郎に呼び掛ける。兄が手を上げたのを確認すれば、勢いよくボールを蹴飛ばした
ボールは綺麗な弧を描き大好きな兄に飛びつくかの様に向かっていく。相手を気遣いスピードも軌道も蹴り易い完璧なボールに、一郎はしっかりと捉えてゴールに向かってシュートを放った
弟が蹴ったボールを兄としてちゃんと受け止め応える。ボールはゴール一直線に飛んでいき、清々しいゴールネットの擦れる音を鳴らしたのだった
『うぉおおおー!!入った!!』
「流石一兄!!とってもカッコよかったです!!」
「兄ちゃんスゲェよ!!一発で決めるんだから!!」
高難易度の事をした訳ではないが、周りの人達はヒーローを称えるかのように騒ぎ出した。目を輝かせ、自分の事のように喜び笑う。その光景に一郎は照れくさそうに笑った
「大袈裟だろ?それに二郎が良いパスをしてくれたおかげだぞ」
「いやいやいやそれでもカッコイイよ!!」
『私なんて未だに入ってませんからね!!絶対凄いです!!』
「一兄は謙遜し過ぎです!」
似たようなリアクションをする3人を見て、妹が増えたみたいだな……なんて考える一郎である。それを口にすれば背後で待機しているヤクザに刺されかねないので固く口を閉じた
「じゃあ三郎、次お前の番だぞー」
「うぐっ、」
兄を賞賛するあまり重要な事を忘れていた三郎。二郎に呼ばれれば肩を跳ねさせ、引き攣った顔で彼を見た
それに対し二郎は逃がさまいとあくどい笑みを浮かべている
「男なんだからやっぱやりませんは通用しねーぞ?」
「運動だけが取り柄のクセに……!!」
「ンだと!!それを言うならお前は頭だけじゃねぇか!!」
「はぁ!?僕のどこが頭だけだって───」
「お前ら喧嘩は止めろって。時間が勿体ないだろ?」
あと少しでサッカーどころじゃなく、ぶつかり合いが始まりそうな雰囲気であったが一郎がそれを阻止。静かに怒れば、声の圧に2人共縮こまるのであった
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時