892話 仲直りのヒント ページ12
《たまたま知ったんだよな。ソイツ様子がおかしくてさ、ちょっと見てたら“あぁアイツ昼飯ねぇんだ”って。…………俺は兄ちゃんが作ってくれた弁当の他に、女子達がくれた弁当も持ってた。手元の弁当見てたら不思議と“渡さねぇと”って思ったんだ》
二郎の照れくさく笑う音がAの耳を擽る。その時の自分の不思議な行動を思い出しているのだろう。きっと彼は頬を掻きながら苦笑いを浮かべていそうだと、Aは釣られて微笑んだ
《でも渡そうとしても、ソイツ弁当受け取らなかったんだ。不貞腐れた顔で無視しやがって……アレはムカついたわ……ッ。じゃねぇわ。無視してきたけど、そのままにするのは最低だって思ったからしつこく弁当を差し出したんだ》
『………その方は受け取ってくれたんですか?』
《おう!俺のあまりのしつこさに根負けしてな!兄ちゃんの美味そうな弁当を見た時に腹を鳴らしたんだよソイツ!もう逃げ道はねぇわな!》
今度は勝ち誇った様に笑う声がスマホから響く。その横から《お前あの一兄の弁当を渡したのか!?》と怒りと驚きが混じった声が乱入していたが、それ程美味しいモノなのだろうとAは特に気にしなかった
《女子が作ってくれた弁当を渡すなんて出来ねぇからな。特別にあげたんだよ。───んで、根負けしたソイツと一緒に屋上で昼飯食べた。……まぁ最初は気まずかったんだけど、何かこう……“やっぱまたコイツと遊びてぇな”って思ってよ。っ………ハハッ、そしたら俺とソイツ、“あん時は悪かった”って綺麗にハモったんだよっ!》
『ハモったって事は相手も謝ったんですか?』
《おう!後から聞いたら、ソイツも謝るタイミング見失ってて言えなくなってたんだってさ。だけど一緒に弁当食べ時に言える気がして言ったらしいぜ?》
『そう…ですか……』
それは彼にも当てはまるのだろうか。Aは俯き、最後の左馬刻の表情を思い出した
信じられないモノを見たような動揺をしていた彼。そしてその後に見せた感情が全て抜け落ちた表情。その顔の裏で何を思っていたのだろうか
不安は残ったままだが、やはり自分から行動しなければ何も変わらない。二郎の話が大きなヒントとなった様で、今の自分に出来る事を見つけたAは顔を上げ口で弧を描いた
『ありがとうございました二郎さん!!私、やれる事を見つけました!』
《おっ!ホントか!!役に立てたなら良かったぜ!》
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん!応援ありがとうございます!これからも楽しんで頂けるよう頑張ります! (7月8日 17時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、!応援しています! (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年6月4日 10時