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桃「忘れたくても、忘れられないっすよ」
多分、私に負けたのがよっぽど悔しかったんだろう。その瞳には、あの時の悔しさが滲み出ている。
あの時、桃城くんからはそれほど悔しがっているようには感じられなかった。
けど、心の奥底ではその悔しさが溜まりに溜まっていたんだろう。
『………じゃあ早速始めようか』
賭け事であっても、練習であっても。
彼も私も全力で勝ちに行く。
ここからは気持ちを切り替えて、真剣に。それでいて楽しんでやろう。
私達はお互いに見つめ合った。
桃「サーブは譲りますよ」
『ふーん、いいんだ…じゃ、遠慮なく』
「ワンセットマッチ、水崎toサーブ」
審判のコールが鳴り響く。いつの間にか周りには私達の試合を見ようと、たくさんの人がコートを囲んでいた。
深呼吸をし、心を落ち着かせる。緊張、してるのかな。
『…よし！それじゃ、久しぶりにいっちょ派手に暴れてやりますか！』
Aはボールをバウンドさせ、サーブの構えをする。
そして、相手の方を見ながらボールを上へと投げる。
次の瞬間、『そのままの状態』でサーブを打った。
スパンッ
『審判〜早くコールお願い』
桃「…なっ！」
Aの言葉に審判は急いで桃城のコートを見る。
「ふ、15ー0！」
大「早い！」
乾「相手の方を見ながら打ち、それに加えてあのコントロールだ。デタラメすぎる…」
この場にいるもの全員が、今のサーブを追うことが出来なかった。
『まだまだ、行くよ？』
桃「…へっ！面白くなってきたじゃねーか」
その時の2人の顔は笑っていた。まるで、この試合を楽しんでいるように。
「ゲーム水崎、3ゲーム to 1」
桃城は何とか食らいついたものの、Aに3ゲーム許してしまった。
『ほらほらー真剣勝負、でしょ？だったら全力で食らいついてきてよ』
ニヤリと口角を上げながらも、顔つきは真剣そのものであった。
桃「勿論、こっから追い上げて見せますよ」
額からひたりと汗を流し、こちらも口角を上げながらそう答えた。
菊「しっかし、ここまでは至って普通の試合だったけど」
河「ああ、どちらも普通のプレーのみだったね」
2人がそう話していると、桃城がリターンを返すところであった。
大「あ、あれは！」
その声に皆がコートを見ると、桃城がジャックナイフで返していた。
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作者名：ミズチー | 作成日時：2019年8月21日 14時
