恋と笑いは紙一重２【芸人短編集】

一番の 【とろサーモン 村田】 ページ40

彩綾さんのリクエストです。





・


村田「、」





単独ライブ終了後、帰ろうと思ってルミネを出ると、すぐ目の前の足元に、よしもとでグッズ化された俺のストラップが落ちていた。


おいおいおい、縁起悪いな。




村田「まぁ、持って帰るか。」






俺がそれをしゃがんで拾おうとしたその時。どこからともなく叫び声が聞こえてきて、俺の伸びる手がピタリと止まる。





『あぁああ!!!そっ、それ！私が落としたヤツです!!!』


村「え、あ……そうなん？」


『はい!!良かったぁ…、やっと見つかった……。諦めずに探したかいがあった…。』


村「大事にしてくださいね？」


『は、はい！もちろ…』







その女の子は、俺のストラップを大事そうに持って俺を見上げると、一瞬で固まってしまった。そしてしばらくの間の沈黙。






『むっ…、むむむむむ村田さんっっ!!!!!』


村「今気付いたん？本物がここにおること。」


『いえっ…！あの…ひひ拾って下さってありがとうございました!!!ああああのっ、私とろサーモンさんのフフフファンで!!今日の単独ライブも!!すっ、凄く良かったです!!!』





どもりながら、あがりながら。必死に俺にファンだと伝えようとするその子が面白くて、俺は腹を抱えて笑った。





『ちょっ…、笑うなんてひどいです!!!』


村「いやぁ…、面白くて面白くて……。何？君若手の女芸人？」


『ただの一般人ですっっ!!!』






地団駄を踏んで、ぷんすかと怒るその姿もおもろくて、可愛らしくて、やっぱり声を上げて笑ってしまう。


あぁ、こんなに腹から笑ったのは、いつぶりやろうか。





村「そんな怒らんでよ？許してや。」


『嫌ですっ!!』


村「許してくれたら連絡先教えたるけど？」


『許します。』


村「ほなら、交渉成立やな(笑)。」






君はにっこりと、笑顔を見せた。



その笑顔に、俺が心から癒されていたのは、ここだけの秘密。

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