不誠実な五条くんに弄ばれたい！【五条悟】

28.イツワリの恋人 ページ31

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五条悟視点


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名前を呼べば彼女は、「なーに？五条くん」と花が咲いたような笑顔で振り向く。


その表情はまるで、本当に自分を好いてくれていると錯覚できてしまうくらいのクオリティで。


その度に俺は頭の中で自分を殴る。


____騙されるな、この女はイカれているのだから、と。





「……今度の日曜、デート行こうぜ」

「うん、いいよ。どこ行く？」

「カラオケ」

「ふは、五条くんほんと好きだよね、カラオケ。いーよ、楽しみにしてるね」

「ん」





俺が好きなのはお前だし……。


そんなど直球な台詞を、俺が吐けるはずもなく。


言葉で伝える代わりに、行動で表す。共有スペースのソファで雑誌を読んでいた彼女の隣に座り、ギューッとその腰に抱き着く。くすぐったいよ、と笑いながらも頭を撫でてくれる手が心地良くて仕方ない。


Aが俺のことを好きだったらいいのに。今まで何度、そう思ってきたことか。


Aは俺のことを好きじゃない。心地良いこの手は、俺以外の誰かにも触れているのだろう。考えたくもないことを考えていると胸が痛んだ。


これは罰だ。過去の自分の不誠実な行いが、巡り巡って返ってきているだけ。


もしも最初からAのことだけを見ていたならば、こんなことにはならなかったのに……。




それでも。


体を起こし、彼女が身につけているネックレスに手を触れる。


これはAに似合うと思って、俺がプレゼントしたものだ。





「これ、たまにつけてくれてるの嬉しい」

「？……え、と」





Aはポカンとした後、数秒してから「あ、うん！すっかりお気に入りなんだー」と顔を綻ばせる。


「似合ってる」と笑い返せば、Aは嬉しそうに俺の肩に頭を預けた。


Aの一つ一つ動作に、大袈裟なほど心臓が騒ぐ。


ああもう、なんでこれでAは俺のこと好きじゃないんだよ。




______Aは俺を好きなフリをするのが上手い。






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