08-それでもよかった ページ8
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凪誠士郎視点
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「すぐ作るから、ゲームでもして待っててね」
「うん」
もう雨は上がったけれど、雨宿りさせてもらった御礼にとAが夜ご飯を作ってくれることになった。
事の発端は、冷蔵庫にインゼリーしか入ってないのがバレたことだった。料理したり食べたりするのが面倒くさいから、ついすぐに食べれるインゼリーばかり買ってしまうのだ。それがAにバレて「そんなの体に悪いよ」と注意された。
でも面倒くさいんだよなあ……。ご飯を作るのも、食べるのも、後片付けをするのも。それを包み隠さず伝えれば、「じゃあ今日は私が後片付けまでやるから、ちゃんと食べて」とAが食材を買いに行って料理をしてくれることになったんだ。
リビングのソファに座って、台所で料理するAの後ろ姿を見つめる。テキパキ動く小さな背中に心がくすぐられる。
思えば今日は、いつもなら面倒くさいと放り投げてしまうことを沢山した気がする。
自転車を漕いだことだって、
部活帰りに出掛けようとしたことだって、
他人を家にあげたことだって。
普段の俺なら面倒くさいと思ってしまうことも、Aとなら面倒くさくなかったんだよなあ……。
この気持ちの正体には、とっくに気づいてしまっている。面倒くさくてしょうがないけど、無視はできなかった感情。
スマホを持ってゲームをしてるフリをしながら、なんともない風を装って話を切り出す。
「Aってさー」
「なーに?」
「レオのこと好きなの?」
「え」
野菜を切っていた音が止まる。視線を上げれば、じわじわと顔を赤くしていくAが目に入って。俺には絶対に向けてくれない表情に、息が詰まる。
「わ、わかる?」
「うん」
「そっかぁ、わかりやすいかあ、私……。玲王にもバレてるのかな」
「いや、バレてないんじゃない?」
「……かな?そうだといいな」
俺がAを見ているから気づいてしまっただけだし。
「……ごめん、凪くん。やっぱり付き合うのやめる?」
「は、なんでそうなんの」
「だって、付き合ってるフリとはいえ、彼女に他に好きな人がいるなんて嫌でしょ?」
わかってないなぁ、Aは。
逆にそれがいいのに。
レオのことを好きなAが、俺と付き合ってくれてるこの状況が、
俺にとってはラッキーでしかない。
「……別に、嫌じゃないよ」
それでもいいって この時は思えていた、のに。
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はむスター(プロフ) - 茶々さん» 初コメありがとうございます!ブーゲンビリアの花言葉、気づいてくださった方がいて嬉しいです😭 (2023年2月10日 17時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
茶々(プロフ) - 初コメ失礼します!ブーゲンビリアの花言葉でもうしんどいです、、。好みど直球な作品で一気読みでした! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 2bcc5ab034 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 莉紅-リク-さん» お待たせいたしました!続編でもお会いできること楽しみにしています!☺️ (2023年1月20日 17時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - おりかさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします☺︎ (2023年1月20日 17時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
莉紅-リク-(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!続編待ってます!! (2023年1月20日 8時) (レス) @page50 id: 24f0804e56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2022年12月28日 17時