からくりピエロ4 ページ3
『……っ！』
今日も君が誉めてくれた服と髪型で待ち合わせ場所にいた。
いつもと同じ毎日。
ただ、ひとつを除いて。
「あ、いたいた！」
『どうして……？』
待ち合わせ場所に、君がいた。
にこにこと笑いながらこちらに近付いてくる。
『あっ……！』
刹那、君は私を通り過ぎていった。
「待った？」
声のする方へ体を向ける。
(駄目だよ、知らない方がいいから)
脳の片隅から聞こえる声を無視して耳を澄ます。
「いやーごめんごめん。目覚まし二個かけたのに遅刻しちゃった！」
「カノ…お前はいつもいつも！」
楽しそうに戯れるキドとカノ。
(だから言ったのに。「止めとけって」ね。)
何処か冷静な頭がそう呟く。
「じゃあ、行こっか！」
手を繋ぐ二人。
＿＿止めて。
私の前でそんな顔しないで。
その笑顔は、その声は＿＿
(ううん、私の物じゃ無かったんだ。初めから。)
もう、戻れない。
諦めきれないんだよ。
その仕草で、その笑顔で、私が壊れてしまうから。
『……』
喉まででかかった声を押し殺して、服の裾を破れるほどに掴む。
『待って』だなんて言えるわけない。
言っちゃいけない。
カタカタと体が震え、強く噛んだ唇から血が垂れる。
(あぁ、そっか)
私はただ、怖かっただけなんだ。
変わるのが、怖かったんだ。
だけど、一番怖いのは＿＿＿＿
何をされても、君が好きな私、だ。
もう、止めよう。
ここで君を待ち続けるのは。
私が、壊れてしまうだけだ。
生暖かい涙が頬を伝って流れ落ちる。
『カノぉ……！カノぉ…！』
きっと私は、君の中では、カノの中では、「道化師」なんでしょ？
(ねぇ、カノ。私はね、)
きっとこれからも君を想う気持ちは変わらない。
だから、私は＿＿＿
君が望む「道化師」になろう。
道化師、ピエロはさ、命令がないと動かないんだよ。
だから、
『君が思うままに、操ってよ』
(愛されたいなんて、我が儘だけど。それでも、君のそばに……)
終わり
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作者名：りん | 作成日時：2013年11月25日 0時
