Episode111 ページ12
.
五感が特殊。目と耳と鼻がよくて、味を感じるのと触れたものを感じることが苦手。それがのSEだ。トリオン体だと味覚と触覚は全く害がなくて気にならないし、鼻も、匂いを感じる必要がないから使わない。目と耳は結構酷使していて、便利といえば便利。そんな力。
「先生ー、今日もお願いします」
「おお亜桜」
ガチャと医務室の扉をあけて、中にいた先生に声をかける。私のSEは数値が変化しやすいもののようで、定期的に検診を受けに来ているのだ。目と耳は使い過ぎると怖いことになるらしいし。
「申し訳ないが、少し待ってくれないか？」
言われて、私は先生の正面にある丸椅子に腰掛ける少年を見つめた。どうやら先客らしく、そちらの診察が先らしい。あまり頻繁に人が来ない場所なので少し驚いた。
「あ、私出て行った方がいいですか？」
先客の男の子は退屈そうな顔をしていて、ちらりと私の方を見たが、合うと目を逸らしてしまった。
「いやいい。結果を伝えるだけだから」
それを訊いて、私はすぐ隣のソファーに腰掛けた。そして先生が男の子の目を見つめて、「君のサイドエフェクトは、」と前置きする。なるほど、この子SE持ちか？
「強化聴力、名前の通り耳がいい」
それを訊いてもその子は特別驚きもせず、無気力な目をしたままだった。
「そこの女の子も耳がいいんだが、彼女と君は少し能力が違ってね」
耳がいいというワードに親近感を覚えたとき、先生が私の方を指差したので、まるで心を読まれたような心地になった。男の子はまた退屈そうな目をこちらに向けるが、また、目が合うと逸らしてしまう。
「彼女は広い範囲の人の声を聴く能力。人の声以外には発動しない広く浅い能力だ。対して君の場合は、そんなに広くない範囲の音を聴き分ける能力。上手く使えば音でその物の性質とかも分かるようになる、狭く深い能力」
へえ、と私は訊き耳を立てた。私のものよりも精度が高い、繊細な能力だ。しかも私の使い方とは全く別の道で、実践に役立ちそうな力である。
「耳だけでも結構種類があって。サイドエフェクトにも人それぞれ個性があるってことを分かって欲しい」
先生の言葉に、同じ器官でも違う能力があることを、初めて知った。そして多分、今静かに診断結果を訊いている少年にとっても初めてのことだっただろう。しかし彼は明らかになった自分の力に対して胸を躍らせるような様子はまったくなく、むしろ諦めや、一種の苛立ちのような感情を含んだような瞳をして、そのまま立ち上がりながら次にこう言った。
「役に立つんですか、これ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 371人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(；▽；)更新頑張ります！ (2019年1月21日 19時) (
レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる！！！面白すぎてヤバイです！！更新頑張ってください！応援してます！！！！ (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO，loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(；ω；) できる限り定期的に更新していきたいと思います！ (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ！ いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ！ これからも頑張ってください！( v^-゜)♪更新お待ちしています！ 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます！！( ；∀；)がんばります！！ (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜桜 | 作成日時：2018年10月8日 12時
