Episode139 ページ40
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「上には遠征未経験者が三人いて、東さんと迅さんがカバーしなくちゃならないんです。けどに東さんは心強いけどスナイパーだし、最前線にいる遠征経験者は実質迅さん一人」
私は全てを説明しながら言った。
「人型も二体いるし、正直心配です。だから……太刀川さんは、迅さんたちの方に戻ってあげてください」
言うと、「はあ?」という元親友の声が訊こえた。太刀川さんは真っ直ぐ私を見つめたまま、しばらく何も言わなかった。普通なら、このまま二人で人型ネイバーを……すなわち奈那を片付けて、そのまま一緒に崖の上に戻るだろう。けれど今私が述べたのは、その普通とは違った答え。一人で戦いたがる私の様子がおかしいことなんて、きっと太刀川さんは気付いている。
「お前はどうする。お前だって遠征経験ないだろ」
怒るわけでも心配するわけでもなく、ただその人は問いかけた。
「ーー私は、こいつを片付けてから加勢します」
こいつ、とは紛れもなく元親友。太刀川さんには断言していないが、こんなに人型ネイバーを庇う私に対して疑問を抱いているはずだ。
「できるのか、お前に」
だから、こんなことを訊くのだろう。……あんなに、遠征を目指す理由にしてきた元親友の存在。太刀川隊の亜桜Aとして頑張ってきた理由。会いたいと焦がれた相手。それが赤橋奈那だった。私の日々に突然介入してきて、そして突然その輝いた日々を奪って、けれどその失った時間に焦がれる気持ちが、今日まで私を突き動かしてきた。その気持ちがあったから、今、この異世界の地に足を踏み入れている。
『A!グラウンド行こ!』
『じゃあ、またA明日ね』
ずっと、たった一人の親友だったそいつ。もう一度、一度だけでいいから、その顔を……
「やります、私が」
けれど、だからこそ、私が決着をつける。
「分かった。でも本気でやばくなったら呼べよ」
珍しく、太刀川さんの物分りが良かった。何も明かさずとも、この覚悟だけは、彼に伝わっている。それが太刀川隊だ。ぽんぽん、と太刀川さんが言葉を発して、私の両肩に手を置いた。真っ直ぐすぎる太刀川さんの目を、私は見つめた。
「その時は、俺が必ずお前を守ってやる」
目を丸くして、固まってしまった。それから自然と私は微笑んでいて、そしてその頼もしさを噛み締めるように少し目を閉じ、「はい」と私は告げる。そして太刀川さんは崖の上へと去って行った。
さあ、あとは、私がケリをつけるだけだ。
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(;▽;)更新頑張ります! (2019年1月21日 19時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる!!!面白すぎてヤバイです!!更新頑張ってください!応援してます!!!! (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO,loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(;ω;) できる限り定期的に更新していきたいと思います! (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ! いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ! これからも頑張ってください!( v^-゜)♪更新お待ちしています! 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます!!( ;∀;)がんばります!! (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年10月8日 12時