Episode124 十五歳 ページ25
出水side
カチャ、とドアを開ける。靴を脱いで電気をつけて、後ろに続く二人をリビングに案内した。ガサガサとコンビニの袋の音が鳴っている。
「お邪魔しまーす」
Aのその声に続いて米屋も「まーす」と声を発する。二人はガサッと袋をテーブルの上に置いて、イスに腰掛けた。結局全員コンビニ弁当で晩飯を済ませた。
.
「あー喉乾いた」
「お前髪乾かせよ風邪引くぞ」
「はーいママ」
「誰がママだコラ」
一番最後にシャワーを浴びたAが、濡れた髪をタオルで拭きながらリビングにやってくる。基地からそのままおれの家に来たため、着替えた服はおれのものだ。米屋もそうである。
「遠征ってみんなで遠征艇泊まるわけ?」
「まあそうなるよな。遠足みてーなテンションじゃないと思うけど」
「帰ってきたらさ、三輪とかも呼んでみんなで泊まりたいね」
ボーダーには歳の近い奴が増えた。Aが言ったみんなとは、昼間にラウンジに溜まったあいつらのことを言っているのだろう。あと女子がいない時は辻も入ってくる。
「いーじゃんそれ、修学旅行みたいで」
米屋がにかっと笑った。帰ってからのことを積極的に話すAからは、遠征への不安や恐怖をあまり感じなくて、むしろ楽しみにしている様子さえ窺える。
何だか妙に胸騒ぎがした。
けれど本心を隠すのがうまいAの様子から、それが空元気なのか、自分でも自分の感情に追いついていないのか、そもそもなんの裏もなく純粋に目標の達成を喜んでいるだけなのかという絶妙なラインを見分けることは難しかった。
「ま、今日は三人で騒ごーぜ」
「おう」
米屋が笑って、おれも自分の不安を紛らわすようにそれに乗る。濡れた髪を耳にかけたAが、少し火照った顔を手で仰ぎながらこちらを見て微笑んだ。冬でも風呂あがりは少し暑いらしい。
『オレは一緒に行けねーからさ。あいつのこと、頼むな』
Aが風呂に行っている間、米屋がおれに言った言葉。何故かそれがリピートした。胸騒ぎがするのはおれだけじゃない……そして一緒に行けない米屋の方が、それは大きいのかもしれない。
『遠征でもしおれが疲れてたら、そん時はあいつのこと頼んだぞ』
『そん時は二人ともオレが何とかしてやんよ』
『そりゃ心強い』
おれも米屋も、この遠征に何かを察している気がする。嫌な予感でも良い予感でもなく、何かが変化する予感。迅さんのような能力もないおれたちには、確信も何もない。それでも、何となくそれを感じていた。
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(;▽;)更新頑張ります! (2019年1月21日 19時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる!!!面白すぎてヤバイです!!更新頑張ってください!応援してます!!!! (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO,loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(;ω;) できる限り定期的に更新していきたいと思います! (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ! いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ! これからも頑張ってください!( v^-゜)♪更新お待ちしています! 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます!!( ;∀;)がんばります!! (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年10月8日 12時