Episode093 ページ44
Aside
枯れ葉がミシミシと音を立てた。家路にはそれが散りばめられていて、どうしても踏みつけてしまう。そろそろ秋も終わるな、と言った頃。冬が顔を覗かせていた。
「あーさくらちゃん!」
「うぐっ、」
不意に後ろから首に腕を回されて、苦しそうな声を出してしまった。声を掛けてきた本人は「女の子らしくない反応だねー」なんて言いながらへらっと笑った。
「奇襲しないでくれますかイヌカイセンパイ」
「人訊き悪いなー、サプライズだよ」
その人は、一つ年上の犬飼先輩。今年の体育祭をきっかけに、うざ絡みをよくしてくるようになった。おかげで私の化けの皮も、とうの昔に剥がれている。
遡ること一、二か月前。
「すいませ〜〜ん、怪我しちゃったんですけど……」
「あー先生今外してるけど、どうかした?」
体育祭。私は転んで怪我をしたので、救護テントに赴いていた。しかし保健の先生が不在で、保健委員の生徒だけが座っていて。絆創膏が欲しいだけだから構わない、と私は告げる。金髪で、青い目だ。
「どこ怪我したの?」
「膝です……」
私はその人の隣のパイプ椅子に座って、擦りむいた膝を見せる。座るとその人のゼッケンが見えて、ああ先輩なんだと分かる。
三年二組の犬飼先輩。
「あちゃー結構痛そうだね。大きい方の絆創膏貼ってあげるよ」
「えっいや自分で貼れま、」
「いいからいいから」
咄嗟になると作った声が低くなるのが、私の不完全な部分だと思う。そんな私の声を遮って、その人は大きめの絆創膏を貼ってくれた。
「ねえ君、この前雑誌に載ってたボーダーの子でしょ」
「!?」
絆創膏を貼って、その人が小さい声で問うてくる。私は驚いてガタッと机とパイプ椅子を鳴らした。動揺して声も出ない。そんな私の様子を面白がるように、先輩は笑っていた。
「あはは、当たりだ」
「な、あれ、見たんですか」
うん、とその人が答えるので、私は頭を抱えた。
「亜桜ちゃんって言うんだねー」
私のゼッケンを見たその人がへらっと笑った。この時から、何だか目だけは笑っていないような気がしていた。
「おれ受験終わったらボーダー入るからさ、その時はヨロシクね」
……と、あれ以来、ボーダーのことを色々教えて欲しいと言われ、私はこの先輩と話すことが増えた。さっきのように絡まれることも多くなったわけで。
「今日お友達は?」
「米屋は居残りです」
「ふーん。じゃあ一緒に帰ろっか」
「……腕のけてくれたらいいですよ」
「あ、ごめんごめん」
ずっと肩に乗せられていた腕を、やっとのけてくれた。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時