Episode071 ページ22
出水side
「おれからすりゃ、太刀川隊の時間って何だったんだよって思っちまうっつーか」
散々米屋に愚痴をこぼした。でも本当は分かっていた。話したところでどうにもならないことも、あいつの親友が自分の意志でAのことを一人にした訳ではないことも。連れ去られたのだから、その親友は悪くない。もしかしたら今も向こうで生きていて、ネイバーに怯えならが暮らしているのかもしれない。もしも親友がそんな状況だったら、助けたいと思う気持ちも分かる。分かるけれど、やりきれない部分があって。
「ってわりーな、そろそろ親帰ってくんじゃねーの」
人の家に上がらせてもらっておいて、なに自分の話ばかりしているのだ。おれは制服を乾かしていたドライヤーを止めて、それを床に置いた。
「いや、今日親帰ってこねーんだわ」
「え、そうなの?」
「仕事だ仕事、明日の夕方には帰るってさ」
「マジ?じゃー泊めて!」
そして翌朝。
「やべー学校遠いの忘れてた」
「校区全然違うもんな」
起きて、おれは現実に気付いた。そりゃあそうだ、他校の人間の家から自分の学校に行くなんて、遠いに決まっている。
「どうすんの?」
「トリオン体で走る」
ピーンポーン
おれがそう言うと同時に、インターホンが鳴った。米屋は確認もせずに鞄を持って、「出るぞ」とおれに言ってくる。
「誰が来たんだよ」
「いーから、早く学校行くぞ」
急かされておれは米屋のあとを追う。玄関で靴を履いて、ガチャ、と米屋がドアを開けた。
「おは……え、出水?」
「おはよー」
「米屋てめー」
インターホンを鳴らしたのはAで、おれは苦笑いしながら米屋を見つめた。馬鹿野郎、Aが来るなら先に言え。
「こいつ今日こっから学校行くんだわ、途中まで一緒に行こーぜ」
「そーなの?……ま、出水がいいなら私はいーけど」
昨日の今日だし、どんな顔でAに接すればいいのか分からない。ぱちっとAと目が合って、お互いにバっと逸らした。
「ま、まあすぐそこまでだしな」
おれはこの空気に耐えられなくて、二人より先に歩きだした。米屋とAはおれを追うように歩き出す。そう言えば、毎朝一緒に登校しているのだと訊いたことがあった。一年生のとき、同じクラスだったんだっけ。仲良くなったきっかけは何だろう。ボーダーの試験の時は既に親密だったんだろうな。……米屋なら、おれみたいにあいつに怒るなんてしないだろうな。
「……くそ」
後ろから楽しそうな話し声が訊こえてきて、おれは小さく呟いた。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時