Episode052 ページ3
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太刀川隊で、あんな実力者揃いの部隊で、私みたいな凡人が役に立つには足し算で並ぶしかない。そして私は万能手を目指した。けれど三月には間に合わなくて、更に時は過ぎていった。
「どーしても弧月でトドメ刺しちゃう」
個人ランク戦ブースのソファー。私は出水と米屋と三人でそこに腰掛けて、わしゃわしゃと頭を掻いた。
「だろーな」
「誰だよ三月に間に合わせるって言ってた奴」
「もうランク戦終わるじゃん」
「うるさいな!」
大口を叩いていた私は四月になっても六千ポイントを貯めることは難しく、米屋の言う通り、ランク戦も終盤を迎えていた。
「その間に進級しちまったしなー」
「そういやお前ら今年はクラスどーなの」
「亜桜とは別のクラス」
「あのさあ今その話必要なわけ?」
私は焦っていた。私が射手用トリガーでも点を取れるようにならなければ、またA級に負ける。
「あの、」
私が天井を見上げるようにして背もたれにポフッと倒れ込むと、突然声をかけられた。私達三人は一斉にその人物を見つめる。
「先輩、俺とランク戦してくれませんか?」
はい?と私達は固まった。その人物が訓練生の服を着ていたからだ。
「それ誰に言ってんの?」
「そこの、女の先輩です」
「だってよ亜桜」
「えっ私?」
出水が半笑いで男の子に尋ねると、その黒髪の男の子は私を指差した。そして米屋がニヤニヤして私の顔を見る。
「君まだ訓練生だよね……?いつ入隊したの?」
「まだ仮入隊です」
「ええ!?」
私はいつもより高い声で男の子に問うて、返ってきた答えに驚いた。仮入隊とは、正式入隊日よりも前の段階だ。おそらく来月の五月入隊するのだろう。
「こりゃおもしれー。でもそれならやめといた方がいいんじゃね?」
出水が可笑しそうに笑って、そしてその男の子は出水の言葉に「何でですか?」と問いかける。
「いきなり弧月マスタークラス目前の奴と戦っても、心折れるだけだぞ」
「それでもいいです、ランク戦して下さい」
「へー?まあ、こんなに言ってんなら付き合ってやれば?」
どうして、この少年はここまで。私が「えぇー……」と困ったような笑みを作ると、米屋と出水は必死に笑いを堪えた。理由はお察しの通り、単に私がこの男の子の前で猫を被っているからである。
「……分かった!」
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市街地に転送され、私は腰の弧月に手を置いた。いつもなら隠れた相手をSEで探して奇襲だが、今回は訓練生相手だしもういいか。
どこに隠れたのか、と思ったその時。
「先輩、手加減しないで下さいね」
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時