Episode006 ページ7
米屋side
あんなことがあっても、現れたボーダーがネイバーを駆除してくれるおかげで平穏は当たり前のように続いている。あの時はどうなることかと思ったが、たまにサイレンが訊こえるくらいで何ら今までと変わりない生活だった。人間とは本当に”慣れ”の生き物である。
季節は巡って、あの侵攻から数ヶ月が経過していた頃。
「今日もダメだったんだけど」
「おつかれ」
「これ以上成績落としたらどうするって」
「あーお前バカだもんな」
「いやお前よりマシ」
ボーダーは防衛基地を設立し、隊員募集を開始した。亜桜はそれに入隊したくて親に頼み込んだらしいが、毎日のように反対されているらしい。亜桜はハッキリ言ってバカだから、親に成績を心配されているのだろう。百点満点のテストがあったら四○点くらいを取る絶妙なバカだ。ちなみにオレは二○点あるかないかのレベルだが。
「Aちゃん米屋くん、味噌汁作って!」
「「はーい」」
特別大規模侵攻の被害を受けていなかったオレたちの地区は、家族を失くした人や家を失くした人は少なく、学校も無事。だから今日も、平和に調理実習だった。あんな悲劇もどこか他人事みたいな部分はあるのだろうし、時間も経って、もう終わった話だと思い始めているのかもしれない。
「亜桜って料理できんの?」
「んーまあ普通かな」
「とことん微妙だな」
オレは野菜を切りながら、鍋を火にかけるそいつに問う。なんとも返事に困る答えが返ってきた。
「黙ってさっさと野菜切って」
「え、おいお前手、」
「手?」
「だから!」
オレはバッと亜桜の腕を掴んだ。きょとんとオレを見つめるそいつを見て、オレはマジかと苦笑いをする。その腫れた指、痛くないのかよ。
「火傷してんだろそれ」
「えっ?」
亜桜は、火をかけた鍋に直に触れていた。絶対熱いしすぐ離すと思ったのに、オレに言われるまでそいつは気付いていなかった様子。そんなこと、あり得るのか?今気づいたと言わんばかりのその女は「うわほんとだ、水膨れしてる」と、軽いリアクションをしてみせた。
「悪ぃ、こいつ保健室連れてってくるわ」
「亜桜さん火傷?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、ありがとね!」
そいつが負傷した手を水で冷やし終えたのを確認して、オレは亜桜を連れて家庭科室をあとにする。
「火傷気付かないバカがどこにいんだよ」
「ぼーっとしてただけだし」
隣を歩くそいつは、痛くなってきた〜などと苦い顔をして手をさすった。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時