Episode004 ページ5
Aside
いきなり無数の大きな黒い穴が空に空き、三門市を化物が襲った。
ザアアァァー………
さっきとはうってかわって、空は曇り、大粒の雨が降っている。私と米屋は、雨の中がむしゃらに走るしかない。
「やばっもう一匹！？」
「くそっ、どっか逃げ道……！」
街中を襲う化物から逃げるように走っていると、正面にもそいつが現れた。どうして、さっきまで当たり前の日常があったというのに、こんなに突然嘘みたいなことが起こっている？逃げようとするも市街地のため壊れそうな建物が並んでいて、近付くのは危険だった。自分たちより遥かに大きくて恐ろしい化物に、私も米屋もパニックになる。初めて死を身近に感じる、そんな瞬間だった。
背後から訊こえた、救いの声。
「少し離れてくれ！」
「っ！」
訊き覚えのある声がして、はっと振り向く。私はその人物に目を丸くするも、言われるままに化物から離れた。すると突然、私は昼間に視たことを思い出した。
「あっ……！」
今化物に向かっていく彼は、昼間“何か”が視えたときに、私が視た人と似た青い服を着ていた。するとその人は華麗に宙を舞って、いとも簡単に化物をさばく。何が何だか分からずその光景を眺めていると、全てを終えたその人が私たちのところにやって来る。
「この辺りは危険だ、災害時の避難所に行ってくれ」
「一番近いのは……学校か」
「そこもボーダーが居るから大丈夫」
「わかりました」
ひとまず、その人に礼を言う。その人は、自分を『ボーダー』だと言った。この日のために訓練してきた、とも。いきなり化物が現れたと思えば、この日のために備えてきた組織がある、などと言われて……。全く現実感が沸かないし、今でも夢なのではないかと思うほど、それは異常事態だった。
そして私たちが走っていくのを確認したあと、その人はこの場から居なくなっていた。
「今の……迅さん、だよな」
「うん……」
入学式で私の視線を奪った、ただの中学校の先輩。それが迅さん。なのに、どうして彼があんな化物と戦っているのか。ボーダーって、一体何なのか。分からないことは沢山あった。けれど今は、ただ自分の命を長らえさせることに意識を集中しなければならなかった。
「雨、強くなってきやがったな」
「ーーそうだね」
後々、ニュースでこの日のことを理解した。
みんなそんな雨の日から始まった一連の出来事のことを『大規模侵攻』と呼ぶようになり、あの化物を『ネイバー』と呼ぶようになって……それが、全ての始まりだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 523人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます！固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜！ (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります！！ (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです！続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます！！わがままな作者で申し訳ないです（汗）必ず戻ってきます…！ (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜桜 | 作成日時：2015年8月5日 16時
