Episode022 ページ23
Aside
それからボーダーの訓練が始まって、時間はなくなったけれど、テストの点は上がったし勉強もはかどった。予想していなかった展開に両親も喜んでいる。
「……らー、……桜ー。おいバカ、おーい」
生きる意欲が沸いたというか。多分、毎日が楽しいから、嫌いなことだって頑張れるのだろう。こんなことは初めてだ。人生で初めて、一つのことに没頭している。まだ見ぬ未来が楽しみで仕方ない。
「亜桜！」
「っ！」
はっと頭を上げる。
「またここかよ」
どうやら、屋上で寝る癖は直っていないようで。梅雨も明けて夏も終わって、今度は寒さとの戦いだ。本格的に寒くなるまでは日課だから、この癖を治すつもりはないけれど。今くらいの季節だと日がさしてぽかぽか気持ちがいいので、息抜きとして頻繁に来てしまう。
「もう携帯持ってくんのやめろよな？ほら、チャイム鳴るぞ」
はいはい、と、私は米屋にやる気のない声を訊かせて、とぼとぼ後ろをついていった。
.
「課題死ね……」
「授業のときやる時間くれたろ？なんでやらなかったんだよ」
その日。学校が終わってから訓練までの時間、米屋の家で課題を駆逐することになった。提出が明日の朝なので、訓練が始まるまでに終わらせないとまずいことになる。
「寝てた」
「だよな」
「あんたもでしょ」
自分も寝ていたくせに偉そうな米屋の腕を、シャーペンでチクリと刺した。痛がる米屋の声と同時に、ブブブとスマホのバイブが鳴る。
『出水 ： 今日訓練何時からー？』
出水からだった。時間くらい自分で把握しろよ……と思いながら返事を打っていると、そんな私のスマホを米屋が覗きこむ。「あれ出水？ライン交換したの？」と米屋、「一応ね」と私。訊くと「ふーん」と、米屋は自分の課題に視線を戻した。返信を打ち終えると私はスマホを裏返して机に置いて、再びシャーペンを握る。
「しっかし、同じ人生でもこうも違うんだ」
「なにが？」
私はシャーペンを動かしながら頬杖をついた。米屋がこちらを見ていることを視界の隅っこで感じながら、私はノートに視線を落としたままセリフを続けた。
「入隊したことでさ、なんか色のついた世界になった」
今までは本当にモノクロの世界のように、何事にも覇気がなくて、色がなくて。そんな私の発言を米屋は「意味わかんねー」と流して、自分の課題を進めた。お気楽な米屋には一生分からないよ、バーカ。
「おーわった」
「はっ、お前もう終わり？」
「うん。そろそろ行かない？」
「待てってオレまだ終わってない」
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます！固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜！ (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります！！ (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです！続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます！！わがままな作者で申し訳ないです（汗）必ず戻ってきます…！ (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2015年8月5日 16時
