Episode021 ページ22
出水side
「はっ?おい亜桜!」
じゃあね!と雑に言い残した女は、突然現れたというのにまた突然この場から走り去って行ってしまった。おれの声も届かず、そいつは見えなくなってしまう。というか、さっきの口ぶりからして太刀川さんとか言う人と亜桜は知り合いなのか?だったらあの人が突然おれに声をかけてきた理由とか、どんな人物なのかとか、訊いておきたいことが沢山あったのだが。
「……へえ、あの子が」
「?」
さっきまで亜桜と話していた、太刀川さんの師匠だと自称する忍田という人が、ボソリとそう呟いた。おれはよく分からずにその人を見上げる。今日入ったばかりなのだから、ボーダーの中には知らない人しかいないのだ。
「おい出水!どうだ、組む気になったか?」
不意に、後ろから声をかけてきたのは太刀川さん。フィールドから戻ってきたみたいだ。おれは亜桜が去っていった方向から反対方向に体を向けて、太刀川さんの方を見た。太刀川さんの奥には、疲れた顔をした対戦相手の迅さんがいる。太刀川さんがこんなに強いなんて、思っていなかった。おれはまだまだボーダーのことはよく知らないけど、素人のおれでも二人の戦いがハイレベルなことは分かったし、太刀川慶という人が相当な実力者だということはわかった。こんな試合を見せられたら、答えは一つだ。
「おれ、高いですよ?」
「こっちのセリフだ」
こんな強い人と隊を組めるなんて。早い段階で活躍できる場所を確保できたのはデカい。確かB級からA級に上がるには隊を組むことが必須だったし、入隊してもう安泰した将来を手に入れたようなものだ。この人となら、確実に上に行ける。
「でも太刀川さん、なんでおれを入れようと思ったんすか?」
思えば話したこともない相手。どこに接点があるんだか。でもその答えは、とても簡単な言葉で返ってきた。
「天才だからだろ。他のやつに取られちゃまずい」
本当、小学生みたいなことを言う人だ。
「君、ずっと一人で突っ立って見てたの?」
「え?いやこの人と亜桜と……ってあれ、」
迅さんに尋ねられて、おれは後ろにいるはずの忍田さんの方を振り返った。でもそこには誰もいなくて、おれは首を傾げる。あれ、あの男の人いつの間に消えた?
「何だよ、A来てたのか」
ふーん、太刀川さん、亜桜のこと名前で呼ぶのか……
「太刀川さん、」
「すぐB級上がるんで、もうちょっと待っててくださいね」
おれがそう言うと、太刀川さんは楽しそうな笑みを浮かべた。
「俺の気が変わらないうちに来いよ」
お安い御用、とおれも笑った。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時