合縁奇縁【WT】 (ページ9)

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都々逸によるところページ9

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元チームメイト兼友人の烏丸は、目の前で今晩の夕飯の話で喜ぶ小鍛冶Aのことが真剣に好きだった。
好きになった経由はこれまた長くなるので割愛。遡ればまだ本部にいた頃から己の顔の良さを自覚していた烏丸は、ほとんどAと一緒に行動していたし、それのなく誤解されるような言動もしていた。

Aが彼氏は要らない、と酔っ払った風間さんに絡まれた時ハッキリと言って以来告白をする機会を伺っていただけで、烏丸はいつでもAとの交際が始まってもいい状態まで親密度を高めていたのだ。

しかしそんな余裕そうな烏丸にも敵がいた。

「お、京介じゃねーか」

でたな、と口には出さぬが内心こぼした。
それはAと同じ隊ーー元チームメイトであり天才射手、アシスト名人と名高い出水の存在であった。
何を隠そう出水もAのことを気にしている人間であり、今1番Aと近しい距離の異性なのである。

烏丸は小さく内心舌打ちをして平面上でどうもと返事をした。

「お前また餌付けされてんのか？」
「レイジさんのご飯で胃袋掴まれない人はいないですって」
「それ風間さんも似たようなこと言ってたな」

Aの手に乗った弁当を見てへぇ、と声をもらした出水は「そういえば」と続けた。

「お前今日本部行くならメディア対策室寄ってけって」
「え、なんでです」
「知らね。根付さんがお前を呼べって」
「昨日教えてくださいよ」
「忘れてたわ」

すまんすまんと笑いながらAの頭を撫でると出水はそれだけだから、と手を振って2年生の教室へと帰って行った。

一連の様子を蚊帳の外で見ていた烏丸は、乱れたAの髪の毛を優しく手ぐしで梳かす。ありがとう、と笑う好きな子の笑顔は思春期の男子には非常に毒だ。
お昼の相手がいないなら2人で食べようかと声をかけようとするのも、これまた好きな子を前にした思春期の男子には仕方ない事だったが、それを運命の神様はあまり面白く思っていないようだ。

「……A、今日昼ひとりなら一緒に」「あっ小鍛冶じゃーん！佐鳥たちとお昼どう？」

「いいの？」と嬉しそうに笑うAと「いいよ！」と嬉しそうに笑う、これまた悪意のない佐鳥。
「……どんまい」と静かに時枝が呟いた。

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