失われた記憶�� ページ8
Aは視線を広津たちに戻す。
再び視界に映る広津たちは、
何かを云いたそうに此方を見ていた。
『…如何したんですか？』
先刻から何か可笑しい。
そう、Aは思った。
自分が如何して生きているのか聞いた時も、今も。
何かを押し黙るように、
口をキツく結んでいる彼ら。
そこで静かに広津は口を開いた。
「…一つ、聞きたい」
『はい』
「篠原君が目覚めた時、そこに誰か居たか？」
そんなに真剣な顔で聞くことなのか、と思ったが
Aはそっと左手を右手で触れながら云う。
『確か、中原幹部です』
「はっ…？」
間抜けな声を出したのは、立原。
彼は何か信じられないものを見たように、
目を見開いていた。
「お前…っ、自分で何云ってんのか判って_______」
「立原」
前のめりになる立原を、
広津は止める。
そして 其の儘 広津はAを見た。
「…そうか、中也君が。
彼は一番 篠原君のこと心配していたのでな」
『えっ、そうなんですか？』
嗚呼、と広津は頷く。
「………彼を庇って撃たれたのが、篠原君だ」
広津の言葉に、Aは目を丸くする。
『中原幹部を庇って、私が…？』
それなら目覚めた時に、
彼が側に居たのも納得が出来る。
…だが、
『…私、全然覚えてないや』
そうなのだ。
Aは全くと云っていい程、
撃たれた時の状況を思い出すことが出来ない。
Aが俯きながら云うと、
立原は奥歯をギリッと噛み締める。
そんな立原を一瞥し、
Aに視線を向けて広津は云う。
「死にかけたんだ。
記憶が曖昧になっても可笑しくないだろう」
『そう、ですよね』
そう云ってAは広津たちの方を向く。
『まぁ、中原幹部が無事ならそれで良いです』
「！」
『幹部を守ったなんて、私結構やりますねぇ』
へへっ、と笑ってみせるA。
その場にいる三人もつられるように笑った。
その笑顔は、
ぎこちなさを含むがAは気付かない。
「…では、我々はこれで失礼するよ。
今日はゆっくり休みなさい」
広津がそう云うと、
其の儘 部屋から出て行く。
「…銀、まだ此処に居んのか？」
立ち尽くした儘の銀を見て、立原は云う。
銀は頷いた。
立原はそんな彼女を見て、
黙った儘 部屋から出て行った。
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花蓮(プロフ) - ｢戀蝶｣から愛読させて貰っています！文ストの小説の中で一番好きです!!!!更新頑張って下さい！これからも応援しています！ (2019年1月2日 16時) (
レス) id: ca285a2166 (このIDを非表示/違反報告)
林檎@諸事情につき低浮上(プロフ) - つ、続きをどうか... (2018年7月21日 23時) (レス) id: 4706140a44 (このIDを非表示/違反報告)
花翠(プロフ) - くるみさん» コメントありがとうございます。オチについてはもう既に決まっています。どうなるのか此処で云うことは出来ませんが、最後まで読んで頂けると幸いです。どうぞ宜しくお願い致します！ (2018年5月27日 17時) (レス) id: 30d88a45be (このIDを非表示/違反報告)
くるみ - 銀ちゃんの辛さもすごくわかります。立原の恋も応援したいですが中也の恋も応援したいです！でも私は中也おしなので中也オチでおねがいしますね！！（もちろん立原もおしキャラですけどね！！） (2018年5月23日 6時) (レス) id: 31ba52f844 (このIDを非表示/違反報告)
花翠(プロフ) - shinox2さん» コメントありがとうございます。立原くんの活躍する小説が少ないなと思ったこともあり、メインのうちの一人とさせて頂きました。ご期待に添えるように頑張ります！ (2018年5月22日 0時) (レス) id: 30d88a45be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花翠 | 作成日時：2018年5月21日 12時
