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失われた記憶 ページ7

「…躰の方は何ともねぇのか?」




Aの頭からそっと手を離し、

その手をポケットに入れながら立原は云う。






『うん、それが不思議なくらいピンピンしてる』







Aはアピールするように手足をバタつかせた。


そんな時、医務室の扉が開く。






「篠原君、起きたのか」


『広津さん、それに銀も!』







医務室に姿を現した二人に

Aは笑顔を向けた。




立原は小さく舌打ちをする。



銀はそんな立原をジトっとした目で見た。






「…なんだよ」


「………」





意味有りげな表情をして鼻で笑う銀。


立原は再び舌打ちをした。






そんな二人を無視して

広津はAの方に歩み寄る。







「様子を見る限り、大丈夫そうだな」


『はい、迷惑をおかけしてすみません…』







そう云って申し訳なさそうに頭を搔くA。


そこで『あ』と何かを思い出したのように彼女は云った。








『……私、敵に撃ち抜かれたと思ったんですが、

何故か傷が治ってたんですよね。

如何してか判ります?』






コテンと首を傾げるA。



すると、一気にA以外の三人の表情が固まった。








『え、あの』






彼らの異変にAは戸惑う。


何かいけないことを聞いてしまったのだろうか。






そんな事を思っていると、

広津が静かに口を開く。






「確かに篠原君は胸を撃ち抜かれた。

…生死を彷徨っていたのも事実。




だが、突然その場に或る異能力者が現れた」







そこまで云うと、

Aはみるみる目を丸くしていく。






「……回復の異能力者だった、その人は。


その異能力者が篠原君の命を繋いで呉れたと云う理由(わけ)だ」






広津は此処で話すのをやめた。



Aは自分の胸に手を当てる。









『……そ、だったんですか』








一度死んでたかもしれない自分。



そう考えると、急に恐怖が襲ってきた。







『でも、その異能力者には感謝しないとですね』








Aは自分を抱き締めるように腕を組む。








『……こうして無事、私は生きていられるから』









Aがそう云うと、

銀はぎゅっと自分の拳を握る。






「………っ」







銀の頭に浮かんだのは、



先程 医務室の前で出くわした

儚げな表情を浮かべる帽子をかぶった上司だった。

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花蓮(プロフ) - 「戀蝶」から愛読させて貰っています!文ストの小説の中で一番好きです!!!!更新頑張って下さい!これからも応援しています! (2019年1月2日 16時) (レス) id: ca285a2166 (このIDを非表示/違反報告)
林檎@諸事情につき低浮上(プロフ) - つ、続きをどうか... (2018年7月21日 23時) (レス) id: 4706140a44 (このIDを非表示/違反報告)
花翠(プロフ) - くるみさん» コメントありがとうございます。オチについてはもう既に決まっています。どうなるのか此処で云うことは出来ませんが、最後まで読んで頂けると幸いです。どうぞ宜しくお願い致します! (2018年5月27日 17時) (レス) id: 30d88a45be (このIDを非表示/違反報告)
くるみ - 銀ちゃんの辛さもすごくわかります。立原の恋も応援したいですが中也の恋も応援したいです!でも私は中也おしなので中也オチでおねがいしますね!!(もちろん立原もおしキャラですけどね!!) (2018年5月23日 6時) (レス) id: 31ba52f844 (このIDを非表示/違反報告)
花翠(プロフ) - shinox2さん» コメントありがとうございます。立原くんの活躍する小説が少ないなと思ったこともあり、メインのうちの一人とさせて頂きました。ご期待に添えるように頑張ります! (2018年5月22日 0時) (レス) id: 30d88a45be (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花翠 | 作成日時:2018年5月21日 12時

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