おいでエリンギ

49、ナイスでバッドなタイミングッド ページ49

「は？」

謎の質問に首をかしげる。

敬語、とチョップされた。チョップ多すぎ禿げたらどうしてくれる、ていうか、

「プライヴァシーなんですけど。」
「プライベートな。」

芸能人を気取って見るも、揚げ足を取られ赤っ恥だ。

「え、ラーメン屋さんですか？それはまあ……、」
いいよどむ。西蔭さんとです、とその一言が言えなかった。

なんとなくだが、西蔭さんとのことはエスカバ先輩に言いたくないような気がしていた。たとえ風子ちゃんでも言えないかも。

秘密にしておきたい。別に、やましいことがあるわけでもなければ、知られて困るというわけでもないのだけれど。

もしかしたら私は、西蔭さんとの関係を相当大切にしたがっているのかもしれない。大切に、自分の中にしまっておきたいのかも。だから人に知られたくないのではないだろうか。

「知り合いと、ですね。」

エスカバ先輩はそうか、頷く。

「なんでそんなこと聞くんですか？」
「ああいや、一昨日、一人でフットボールフロンティア見に行ったっつってただろ？でも、普段お前ラーメン屋さんに一人で入らないから。」
ちょっと気になったんだ、と続けた。

「そすか。」
エスカバ先輩、わけわからん。頭が良いと色々気になっちゃって大変だな。

CMが流れ始め、私はカメラを起動させた。
両校が整列しているのがカメラに映っていることを確認し、懲りず手すりにくくりつける。
そして試合が始まろうとするまさにその時、エスカバ先輩が言う。

「知り合いってさー、……野坂くん？」

違いますよって、言おうとしたら笛が鳴った。

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