おいでエリンギ

45、なんだって？！ ページ45

会っちゃった。“ちゃった”じゃないなと思い直した。
会えた！イエーイ！

翌日、フットボールフロンティアの会場に着いてすぐに、西蔭さんの後ろ姿を発見した。家の近所でこそなかったが、まさかこんなに間を空けずに会うことになるなんて、夢にも思わなんだ。

声をかけるかどうかのいささかの逡巡の後、

「西蔭さん。」

その大きな背中に呼びかけると、西蔭さんは振り向いて、すこし目を見開く。

「今日も来たんですね。」
「ああ。お前こそ。まさか、こんなに早く会うことになるとは。試合見に来たのか？」

無名選手の私と、西蔭さんが喋っていることに周囲がザワつくのを感じるが、無視して会話を続ける。

「今日は、試合の録画です。チームのおつかいですよ。」

今日もまた危険色だな、との西蔭さんの呟きが聞こえた。いつもそういう風に思われていたのかよ。
実は今日は普通に私服を着てこようと思ったのだが、夏服はどれも窮屈なものばかりで、一年間の自分の成長を感じてしみじみしてしまった。4月から毎日、制服とジャージを交代で来ていた人間のさだめである。
近いうちに洋服買いに行った方が良いだろうか。でもぶっちゃけ、困らないんだよなあ、基本制服とジャージしか着ないし。
今日は制服だ。制服は、ドイツだかベルギーだかの国旗に見える分、わりかしお上品な気がする。勝手に思っているだけ。

ピエロみたいだという意見もある。

「西蔭さんは、今日は1人ですか？野坂さんは？」
「野坂さんは用事があるらしくてな。二試合目の観戦にはご一緒させていただく予定なんだが、第1試合の守屋中対稲目中は俺個人として興味があったんだ。」

ご一緒って。お上品だな、おい。些細なことが耳につく。

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