おいでエリンギ

34、みかくGAイッチ ページ34

そういえば、風子ちゃんが買っていた雷おこしサンドはすごいおいしくて、私も試合の後についつい購入してしまった。トゲもじゃを選んだのは、完全に選択ミスだった。

西蔭さんは、野坂さんが買ってきたからトゲもじゃを食べたというが、野坂さん自身はトゲもじゃを美味しいと思ったのかがとてもきになる。

それを聞くと、
「ああ、野坂さんはトゲもじゃを気に入っていたようでな、まずいとか言えなかった。」

「いや、別に友達相手にそんなに気を使わなくてもいいのでは。まずいものはまずいって言うべきだと思いますけれど。」

野坂さんは西蔭さんの上司か、と若干の呆れもあって言う。勿論、西蔭さんとはそこまで仲が良いわけではないので、呆れの色は出さずに頑張る。

すると、西蔭さんはまた、俺は野坂さんにお仕えする立場うんたらかんたら。

やはり、複雑な関係すぎてわからない。同い年の人間に従っているという行為が、理解の範疇を超えているのかもしれない。

そもそも他人との関係についての認識が、『友達など』と『それ以外』しかない私である。

西蔭さん、は、なんだろう『知り合い』で。なんだって例外はあるものだ。だって彼とは出会って日が浅い。

それにしても、西蔭さんと野坂さんはいつも一緒にいる〜とファンの間では有名らしいが、そんな多く行動を共にする相手を頑なに友達じゃないと言い続けるなんて、なんというか、疲れそう。

だけれどそれは口にはしない。他人の関係に首を突っ込むのなんて野暮にもほどがあるし、私と西蔭さんがまだ『知り合い』なのもある。

「ああ、あと、野坂さんは他にも買って来ていてな。それは、あまりお気に召さなかったようだ。」

俺は結構美味しいと思ったんだが。と、西蔭さんが言った。おそらく、そのことも野坂さんには言わなかったのだろうな、と予想がついた。

「なんていう奴ですか？」

言っても多分わからないぞ、と西蔭さんは前置きしてから言う。

「……雷おこしサンドってやつだ。」
「あれおいしいですよね！」

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