おいでエリンギ

33、良い友人を持って ページ33

「今日は野坂さんとは一緒じゃないんですか？」
「ああ、本当は一緒に来ていたんだが、頭が痛いと帰ってしまった。」
「えっ大丈夫なんですか、それ？一緒にいた方が良いんじゃ。」
「そう言ったが拒否されたんだ。ただの天気痛だって。」

ああ、確かに8月は偏頭痛持ちは大変そうだ。風子ちゃんも結構気圧の変化に弱いタイプで、その泣き言に私は長年付き合って来た。

「西蔭さんこの後の試合見ますよね？」
「ああ。わざわざここまで来て何もせずに帰るのは気がひける。」
「じゃ、前の方の席で見た方がいいですよ、絶対。」

西蔭さんが座ったとなりに私も腰掛けた。これファンの人に見られたら嫉妬の嵐だとか思いつつ、まあ最終的には纏向中のおっかない噂パワーでなんとかなるはず。

根も葉もない噂のせいで地元の中学の子たちにはビビられているが、実際の纏向中は、すこ〜し喧嘩っ早い子が多いだけだ。本当にすこ〜し。地域のマダムたちの間では品行方正で通っているし。

「あ、そういえば西蔭さん。トゲもじゃ焼きそば、友達がボーノボーノって食べていました。」

実際はそんなにお上品な食べ方でなく、うめえうめえ、だった。が、見栄を張って綺麗な言葉を使う。

「本当か？とんでもない奴だなそいつ。」

西蔭さんの口調的に、とんでもない言葉使いという意味も含まれている気がする。多分見栄を張りすぎた。

とんでもない敏腕マネジャー、風子ちゃんは昨日私が食べあぐねていた焼きそばをおいしくペロリしてくれた。もとより、変わったものが大好きな友人だ。

「風子ちゃ……いや、友達に言われて私も一口食べたんですけど、舌が痺れて味を感じるどころじゃなかったです。」

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