魔王と冷徹(笑)狙撃手【WT】

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＿＿彼女は迅悠一が苦手である。


こちらを見透かしたような目や、未来視というサイドエフェクトを周りから頼りにされている所を、少なからず憧れ、同情していた。

そんな彼女は『人の思考を読む』副作用(サイドエフェクト)を持つ。

視界に入れた人間の思考をことごとく、リアルタイムで把握出来る。

迅が未来視というならば、彼女は現在視だろうか。

そして、この男はこちらが思考を読んでいる(・・・・・・・・・・・・)と踏んで、わざわざ電波のように訴えてくるのだ。

以前、密談には最適だと言われたが冗談ではない。
こちらは読めても、相手に伝える術は無いのだから。

それに相手の考えを読めても、損をすることばかりだと彼女は体感している。

そんなふうに、自分の能力を嫌悪する彼女には、迅悠一という人物は眩しくもあり苦手でもあった。

その彼女の思考を主に逃亡に偏らせている男は、好物のぼんち揚げ片手に朗らかに言った。

「まぁ、何はともあれ、お前が仲間を見つけてくれて良かったよ」

そう言う迅の言葉に、彼女は首を傾げる。

仲間、なのだろうか。

……いや、違うなと首を振る。
自分は利害が一致しただけの関係に過ぎない。

そもそも、『仲間』という曖昧なものが彼女には理解がしきれなかった。

そんな彼女に、迅は思わず呆れる。

「槻島、結構根暗だな……」

そんなことは知っている。
ただ、まだ少し、踏み出す勇気が無いだけで。


「大丈夫だよ。未来は変えられる」


ぽん、と迅の手がAの頭を優しく撫でた。

……こういうさり気ない優しさが、彼女は苦手でもあった。



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