太刀川隊のケンカップル事情 4【出水 公平】

喧嘩 150 ページ24

「お、おい。祐也くん連れて行かれたけど‥‥」


『っう‥‥ぁ、ぁ』


戸を開けると、そこになうまく息が出来ていない彼女が蹲っていた。
涙を流して、俺の顔見ようともしない。


「おい、ゆっくり息吐け。吸おうとすんなよ」


しばらく背中を撫で続けると、過呼吸は治まった。
けれど、涙をずっと流している。

俺の服をギュッと掴んで、離さなかった。


こんな彼女、今まで見た事がない。
泣き顔はいくらでもあるけれど、悔しさや憎しみが強いような‥‥そんな感じ。


「何があったかは知らねぇけど、落ち着けよ」


ギュッと抱きしめると、更に涙が溢れ出す。
肩が震えていた。


泣き止むまでずっと、俺は離さなかった。



「‥‥‥祐也のお父さんか」


『もう、兄弟じゃ無くなるかもしれない。でも行った方が幸せな生活を過ごせるから、引き止めたくなかった。それに言われた。お前に息子は任せられないって』



再び涙が零れ出す。
俺は黙って彼女を見ていた。


関係のない俺が手を差し出す事はできない。
これは彼女が解決すべき問題だ。


「お前はこれくらいで祐也を手放したりすんのか？」


『‥‥‥え』



「祐也の意見は聞いたか？お前の気持ちは伝えたか？それも出来ないようじゃ、お前は絶対に勝てないぞ」



彼女の涙が止まった。

正直、祐也くんのことで悩んだりされるとモヤモヤして腹がたつ。
そして、彼女を泣かせた祐也くんにはもっと腹がたつ。



「明日、また来るんだろ。今日は泊まってやる。ゆっくり休めよ」


『っ、あんたにアドバイスされるとは思わなかった』


「目ぇ真っ赤な奴に憎まれ口叩かれる筋合いはねぇ」

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