アテになんねぇ”大丈夫” _4 ページ26
横目に映る人たちは、
何やら浮き足立っているように見える。
手を繋いだ恋人たちも、嬉しそうだ。
今日はクリスマスイブ。
一方で、
自宅へ向かう道を歩き始めたAは、
場違いなほど、傷ついたような表情を浮かべていた。
まっすぐに謝罪の言葉を述べてきた松田に、
誠意を感じた。
罪滅ぼしのように、毎日店を運んでくれた松田に、
情のような、暖かい感情が芽生えていた。
警戒心が消えるにつれ、
どこか、安心感を覚えるようにもなっていた。
昨夜、あの男から助けてくれたのも、事実だ。
感謝していない訳じゃない。
昨夜といい、先ほどといい、
警戒心のなさを叱りつけるようにしてぶつかってきた松田に、
何とも言えない感情が湧き上がっていた。
それが何なのかも、
Aは分かっていた。
それでも――
『もう、関わり合いたくない…から…』
桜田一真が既婚者だったことを知り、
そして、彼が刺されるという事件が起こり、その犯人はもう一人の不倫相手だった。
そして、自身の店に突然現れた、元カレの侑斗。
自信家だったのは昔からだが、社会人になって、どこか間違った方向へ変わってしまった彼。
最低な別れ方をして、もう二度と会いたく無かった侑斗との再会。
そして、昨夜のストーキング行為。
先ほどまで店にいた男は、松田の言うようにどこかで自身を見ているかも、しれない。
この数カ月で、実に様々なことがあった。
“アンタ、どんだけ男運悪ぃんだよ”
松田に言われたことは、
A自身が良く分かっていた。
『もう、こりごり…よ』
男なんてもう二度と関わらないと、
そう言い聞かせるように、Aは小さく呟いた。
『もう、こりごり…だから』
芽生えそうな感情に流されそうになる自分の弱さを戒めるように、
もう一度呟くA。
誰かを好きになる、
そんな気力は、もうAには残っていなかった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時