Glass 62 ：報告 ページ38
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「で。逆プロポーズはどうなった？」
若者が賑わう休日昼のcaféで、頬杖を突きながら厭らしく口角を上げる
睥睨を向けた七汐は、手元の珈琲カップに指を掛ける。
楽し気なその顔に、答えてやるのも酌だと感じた七汐は、
期待に目を輝かせる翔をたっぷりの逡巡で焦らした後、ようやく重い口を開いた。
「まぁ。それらしき言葉は貰った」
「おぉ、すげ！逆プロポーズなんて憧れるよな」
予想通りの返答に、テンプレート会話を張り付けた様な文言を返した翔だが、
さらり聞き流せない文脈を、指摘した。
「って。“それらしき”ってなんだよ。２月14日は有給取るって言ってたじゃん。
祥子さんの予約したレストランでディナーして、逆プロポーズなんだろ？」
七汐は珈琲カップに静かに口をるける。興奮気味な翔に対し、過日を思い返す彼は至って冷静だった。
その態度が、翔の好奇心と興味を余計に急かした。
当初は、その予定だった。
その為、2月14日は有給休暇申請を行い、昼間のデートプランをあれこれと考えては浮足立っていた程だ。だが、2月に入り立て続いた予想外の出来事によって、“予定”は思わぬ方向へ動き出す。
まぁ。予想、出来なくもなかったのだが―――。
一つ目は、祥子の体調不良。軽く予診する限りは感染性の症状ではなさそうだが
INFINITY∞は飲食業であり接客業の為、スタッフの体調不良はよりシビアな対応が必要となる。
念のためにと内科受診した祥子から、必ず埋め合わせはするからと2月14日の予定キャンセルを言い渡された。
あれほど楽しみにしていただけに残念な気持ちは勿論あるが、祥子の体調が一番であり、優先すべき事だ。七汐は二つ返事で承諾した。
重なった二つ目は、季節性感染症の流行による病院スタッフの欠員。
人生における一大事の為断ることも出来たが、先約が反故となったため
先日の2月14日。
勤務終わりにI-nfinityのロビーで祥子と会い、そのまま彼女に夕飯(と、チョコレート)をご馳走になった折に、伝えてくれたのが“逆プロポーズ”―――。
『七汐君と、家族になりたい。
うちに、
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