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｢お、Aちゃん｣
膵臓を目指して歩いているとばったり20さんに会った｡
｢こ、こんにちは、20さん｣
26さんと49さんのおかげか、名前を呼ばれても逃げ出すことはなくなった｡
ただ副作用なのか、Aちゃんと呼ばれると顔が真っ赤になってしまうようになった｡今までミヤちゃんに呼ばれてもなんてことなかったのに｡ミヤちゃんにめちゃくちゃ心配された｡
今もきっと顔が赤い｡慣れたとはまだ言えないな｡
20さんが何か悟ったように苦笑いを浮かべた｡
｢あいつらがなんかごめんな｣
｢いえ……｣
2人は悪くない｡私が名前呼びに慣れるようにってやってくれたことなんだし｡
｢どっち行くの?｣
｢膵臓までです｣
｢じゃあ同じ方向だ｡ご一緒しても?｣
｢もちろん｣
20さんとちゃんと喋るの初めてかも｡いつも一歩引いたところでなだめ役に回ってるイメージだ｡紳士だし、なんか大人びてる感じでちょっと憧れる｡
｢20さんって大人っぽくてかっこいいですよね｣
あ、思ってること言っちゃった｡すごく自然にこぼれ落ちたわ｡
ほら、ちょっと見てごらんなさいよ｡20さんびっくりしてるじゃないの｡
｢す、すみません!前から思ってたのでつい……｣
｢いや、謝らないで?なかなか言ってもらえることじゃないからちょっと驚いただけ｣
20さんははにかんで、そう言った｡
うっわ〜!対応がスマート〜!そういうところが大人っぽいんですよ、20さ〜ん!
どうやったらこんな素敵な殿方が育つのだろうか……｡
真面目にそんな馬鹿らしいことを考えながら、ゴロゴロとカートを押していく｡
そういえば20さん、さっきから黙りこんじゃったな｡やっぱ私なんかに褒められても嫌なだけだったか……?
そっと20さんの表情を覗き見るために視線を上げると｡
｢え｣
｢あ｣
目、合っちゃった｡こっそり見るつもりだったのに、がっつり目が合ってしまった｡
いやいや、今はそんなことより!
｢……20さん、顔｣
｢み、見んな!｣
そう言われましても｡
右手で口元隠されてそっぽ向かれたら見るものも見られないっていうか｡
20さん、顔が真っ赤っかだった｡あ、耳もほんのりと赤い｡……照れてるの?
私が懲りずに20さんを見上げてると、ザザザというノイズの音｡無線機に応援要請が入ったらしかった｡
帽子を目深にかぶると、20さんはじゃあと言って駆けていった｡去り際まで爽やかですな｡
｢……ふふ｣
20さんの意外なとこ、見つけちゃった｡これが私得ってやつ?
上機嫌な私は軽くなった足取りで膵臓へと足を進めた｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年9月19日 17時
