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「ありがとな、今日」
「…ッ、こちらこそ」
手を引かれたまま電車を乗り継ぎ到着した駅前には、やはり有頂天な雰囲気が香る雑踏が。その中を進むため、自然と絡められる指と指から伝わる先輩の体温に寒さなんて忘れた。先を歩く先輩が人混みを掻き分けてくれているおかげで、大分歩きやすくなった私は、いつもと変わらない優しさを向けてくれることに、もう胸がいっぱいだった。
暫く歩いて着いたのは、大きなショッピングモールに併設されま都市型水族館だった。先輩はごめんな、と言ってから1度繋いだ手を離し、財布から取り出したチケットを私に手渡した。
そしてまた、何食わぬ顔で手を繋ぎ入口ゲートへと進む先輩。
どこまでもそのスマートな行動に、頭が追いつかない私は、彼を追うことしか出来ないのだけれど、私の歩幅に合わせてくれる彼に、また高まる気持ちを抑え込むのに必死だった。
…今日の先輩もやっぱりかっこいい。
黒のストレッチトレンチコートをひらひらと翻し、中はチャコールのセーターを合わせていた。そして黒いスキニーパンツ、靴底をホワイトの刺繍で一周させた革靴を履いていた。白銀の髪とは対照的なブラックコーデの彼を見る周囲の女性たちの目に、自然と熱が籠るのを感じ優越感と悋気が入り混じる私は、無意識に彼の手をギュッと握ってしまっていた。
「どうしたァ」
「あ、いえ」
私の顔を覗き込む先輩は、心配そうに私を見ていたがそれは一瞬で、ほんのりと笑い私の頬を空いている右手でするりと、いつかのように撫でた。
「可愛いなァ。」
緩く巻かれたポニーテールの先を軽く指に絡めながら、そう言う先輩は何から見るか、とガイドマップを仔細に眺めていた。「時計回りでいいかァ?」と問いかけてくれる優しげな瞳には、先輩に心酔した私が映っていた。
正直なところ、どう周ろうが何でもいいと、2人でいれるならばそれでいいと、思ってしまっている私は「…はい」と小さく頷くことしかできず、せっかく色々と考えてくれている先輩に後ろめたさを感じずにはいられなかった。
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三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年1月26日 21時