ホイップ増量で。【不死川実弥】

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急に外気温に晒された身体は、小さく震えてそれに反応するようにポケットに手を突っ込んだ。帰宅を急ぐ会社員の姿がちらほらと見える道を、2人無言で進む。たくさん買ったが飲み切れなかったジュースと、食べきれなかったお菓子の入った袋を持つのはいちごミルクだけは飲みたいと言った赤い顔の彼だった。




「…明日1限だァ」



…だっりィ、と呟く彼。なのに送ってくれているなんて、申し訳ない気持ちと嬉しさが半々の私は、「優しいですね」と自然と口から溢れていた。それを聞き逃さなかった彼は、まぁな、と口角を上げた。意味ありげな顔、とでも言うべきか、先程言っていたことがフラッシュバックした。



ダメだ、ダメ。そう言い聞かせるように、何度も何度も心の中で舞い上がるもう1人の自分を宥める。



彼のアパートと私のマンションは、然程距離はなく体感的には10分もないため、あっという間にマンションに到着した。荷物が重いからと玄関先まで来てくれた先輩は、じゃあな、と空いた手のひらを私の頭に乗せた。



「…ありがとう、ございました」



恥ずかしいのと同時にまるで、妹のような扱いに言葉にならない複雑な気持ちの私は、先輩の目も見ずに答えた。私の頭から手を離し、一歩、また一歩とマンションの廊下を進む彼の背中を見つめていれば、急に立ち止まる先輩。



「…不死川先輩？」


その場に佇む彼の名前を口にすれば、意を決したように振り向き、ズカズカと大股でこちらにくる先輩。先輩はそのままの勢いで私の部屋の扉を大きく開いた。あまりの勢いに思わず背中を反ってしまったが、関係ないと言わんばかりに先輩は、私との距離を縮めてきた。



＿＿＿＿＿その距離、わずか、30cm。



淡い紫の双眼に捕らえられて、まるで凍ってしまったかのように動けなくなってしまった私は、呼吸もままならない状態で、口籠る彼から紡がれる言葉を待ち続けた。



「クリスマス、バイトか？」
「…ッ、バイト、です」



3時まで、と私は言った。青菜に塩、とはこのことかと言わんばかりの彼だったが、私の言葉に空けておけ、と心底嬉しそうに笑った。そして今度こそ、またな、と私の頬をするりと撫でて背中を向けた。すぐにベランダに回れば、1人歩いていく彼が見えた。

ひゅるひゅる、とその場に力なく座り込んだ私は暫く動くことが出来なかった。

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