ホイップ増量で。【不死川実弥】

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眠り目を擦りながら後ろの席が埋まりつつある講義室に現れた宇髄は、前の空いた席に腰を下ろした。1限の開始5分前、ダラダラとスマホを弄る宇髄がそういえば、と思った時だ、大きな慌ただしい足音が廊下から聞こえ、その直後、息を切らした不死川の姿があった。

宇髄を見つけた不死川はその隣に座りノートやらを取り出した。その時、1限担当の講師も到着しパソコンを起動し始めた。スクリーンに映されたスライドが見えるようにと、講義室の電気は落とされ、講師の気怠そうな声が合図となって1限の講義が開始された。



「今日おせぇじゃん、不死川」
「寝坊したァ」
「昨日どうだったんだよ」
「…別に」



シた？という宇髄の言葉に、シャーペンを握る手に力が入りその勢いで芯が折れてしまった不死川は、はァッ！？と声を出してしまい、その声に講義を進める講師と周りの学生が一斉に彼を見た。ごほん、という眉間に皺を寄せた講師の態とらしい咳払いに、頭を下げる不死川の隣で、必死に笑いを堪える宇髄は、目に涙を浮かべていた。



「死ねェ」
「その様子じゃなんもねぇのか、つまんねぇの」



顳顬にいつもの如く青筋を浮かべる不死川を見て、宇髄ははあ、と溜息を零しつつ、壁に掛けられたカレンダーを一督すれば「誘えた？」と、不死川にコソッと言った。すると、不死川の顔はたちまち赤くなった。コクリ、と小さく顔を縦に振った不死川を見た宇髄は、満足そうに「へぇ、やるじゃん」と不死川の肩を軽く自身の肩で押したのだった。



…以前、不死川が鍵を無くし宇髄のバイトが終わるまで付き合ってくれたAにお礼をする、という題目で昨日、不死川はAを誘い鍋を2人で楽しんだ。その際、不死川はAにクリスマスの予定を聞き出し、あわよくばクリスマスの予定を取り付けられないかと宇髄はずっと考えていた。


宇髄の隣に座る不死川、2人は小学生時代からの仲である。そして宇髄が知る不死川は、昔から無愛想な男であった。だからと言って、今まで不死川に色恋がなかったわけではないが、あまり良くない結果に終わっていることを宇髄は記憶していた。だからこそ宇髄は、今度ばかりはかなり積極的な彼の想いが実ってほしいと、陰ながら思っているのだ。




「…兄ちゃんみたいって言われたけどなァ」



肩を落とす不死川に、何も言えない宇髄だったがこんなにも色んな意味で表情豊かな不死川を今まで見たことがなかったため、柄にもなくふっ、と小さく笑った。

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