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店内に入ると、賑やかな客席に目を奪われる。
もはやうちの店とは次元が違った。
活気に溢れているのに上品で、従業員も対応がスマートだ。
慣れていない、なんて人はひとりもいない。
うちだとバイトの女の子がしょっちゅう注文ミスったりするけど、きっとそういうのも滅多にないほど教育されているのだろう。
「どう？楽しい？」
「あっ、はい…」
「そのスーツもよく似合うな。少し大きめだったから、今度は合うように仕立ててやるよ」
「いや、そんなことまでしてもらわなくても…！」
「別にいいだろ、タダなんだから。使えるもんは使っておくって意識も大事だよ。金持ちと出会えてラッキーくらいに思っておけよ」
「はぁ…」
松岡さんは当たり前のような顔をして言う。
どうしてここまでしてくれるのだろうか。
このスーツだって、いくらするかなんてとても聞けないが、きっとめちゃくちゃ高いはず。
汚してはいけないプレッシャーから、お酒以外の料理になかなか手をつけられず、ドキドキしながら開演を待つ。
そして客席が暗転し、パッとステージの照明が明るくなった。
バンドは全員外国人で、マイケルみたいな黒人がボーカルのようだ。
ジャズというよりは、ソウルミュージックのような雰囲気で、アップテンポな曲が客席の温度を上げていく。
気付いたらみんな食べることを忘れ、手拍子をしたり、各々のやり方でステージを楽しんでいた。
「こうやって１曲目からぐっと客の心を掴む。これが素人には難しいんだよな。１曲目こそがその公演の出来映えを左右する。これが成功例のひとつだ」
俺は松岡さんの言葉すら耳に入らないほどステージに夢中になっていた。
力強い歌声、身体中から溢れんばかりのビブラートを効かせている。
どうしてこんなに胸に突き刺さるような歌い方ができるのだろうか。
これと比べたら俺の歌なんて、素人に毛が生えたレベルでしかない。
「楽しいか？」
「うん…すごい、」
思わず漏れた一言に、松岡さんは嬉しそうに笑っていた。
これが一流のジャズバーであり、一流のアーティストだ。
確かにチャージ料は高くつくが、それ以上の価値がある。
逆に、俺の歌にお金を払ってくれている人たちは、それほどの価値があると思ってくれているのだろうか。
店もアーティストも客商売だ。
お客さんを残念がらせるような歌を届けてはいけない。
だとすれば、本当はもっと、努力してあのステージに立つべきなんだ。
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富喜田 - 大野さんが凄く可愛かったです！ 櫻井さんsideは初めてだったので、 読んでいておもしろかったです。 続きを楽しみにしています！ 私の毎日の楽しみになっちゃってます！ (2020年8月15日 18時) (
レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - naoさん» そうですね、貴重なご意見ありがとうございます！ (2020年8月9日 6時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 大野君って矛盾してますよね。自分がされて嫌なら潤くんとのキスも思わせぶりな態度も改めればいいのに。 (2020年8月9日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京
| 作成日時：2020年7月25日 13時
