�� ページ26
「あ、あの…寝ようと思ったけど、寝れなくて…」
「慣れないベッドだから、寝付けなかったのかな…？」
「ん…それ、も、あるけど…」
ちらちら女の子のほうを見ては、口をつぐむ。
すると彼女たちは気を遣ってか、聞こえない振りをしてまた話しながらエレベーターのほうへと歩いていった。
それを確認すると、智くんが小さく口を開いた。
「翔くんとじゃなきゃ、寝れなくて…」
やっぱり、俺が気にしていることなんてちっぽけなことだったんだなって思う。
俺ももう少し、柔軟に接していいのかもしれない。
だってあの女の子たちはもう、俺たちを男の子だから、なんて咎めないのだから。
「じゃあ、一緒に寝よう」
「えっ、あの、どこへ…」
エレベーターとは真逆のエントランスへと足を進める。
智くんは何も言わずただ手を引かれるままついていくだけ。
キャンプ場にもなっている広場へ着くと、芝生の上に座り込んだ。
この時間でも人はちらほら見えていて、寝そべって眠りこけているカップルもいた。
「ここ、どこなの？」
「あれ、まだ気付かない？」
「えっ、何が？」
「なら、こうしたらどう？」
「えっ！？翔く…！」
急に芝生の上に押し倒され狼狽えるも、俺は彼の上に乗ることなく、隣に横になった。
そして見上げると、そこには数え切れないほどの光の粒が夜空一面に広がっていた。
「わっ…すご、」
「ね。すごく綺麗」
「すごい。さっきの蛍が、空にいっぱい」
智くんの表現はときどき独特だ。
でも、いつも的を得ていた。
ひとりぼっちの中で見た草むらの蛍は今、二人になった俺たちを照らしてくれているようで。
悲しい表情の彼を、次第に笑顔へと変えていった。
「蛍はすぐ死ぬって聞いたけど、ほんとはお星さまになるのかなぁ」
「えっ？それ、本気で言ってる？」
「なんで？本気だよ。だって少しこうやって瞬きしただけで、光が点いたり消えたりするの」
確かに、少し視線をそらせば、たった今まで見ていた星は消え、新しい星が生まれてくるようだ。
気付けば俺の中の無意味なしがらみも消えてしまっていた。
「翔くんも光ったり消えたりするよね」
「えっ、どうして？」
「だって、一緒にいるときは消えてるのに、離れると明るくなるの。こっちだよって言ってるみたいにね、いつも声が聞こえるの」
智くん、智くんってね。
そうだよ。
だって俺はいつも、どんなときでも、あなたの名前を呼んでいるのだから。
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富喜田 - 大野さんが凄く可愛かったです！ 櫻井さんsideは初めてだったので、 読んでいておもしろかったです。 続きを楽しみにしています！ 私の毎日の楽しみになっちゃってます！ (2020年8月15日 18時) (
レス) id: cb1ca5340c (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - naoさん» そうですね、貴重なご意見ありがとうございます！ (2020年8月9日 6時) (レス) id: 877cf6680c (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 大野君って矛盾してますよね。自分がされて嫌なら潤くんとのキスも思わせぶりな態度も改めればいいのに。 (2020年8月9日 2時) (レス) id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：京
| 作成日時：2020年7月25日 13時
