Day.2-1 ページ5
次の日、奏汰はまた海へと向かっていた。
この日は日中に『流星隊』での練習があり、練習終わりの彼は少し早足だ。
もうすぐ夕刻にも関わらず、夏の空からは太陽が燦々と降り注ぐ。
日の入りが遅くなったせいか、奏汰が海で遊んでいる時間も長くなった。
奏汰がここへ来るのは定期的だが、昨日『また明日』と言われたことを思い出し、今こうして海へ向かっている。
近づくたびに、潮の香りが濃くなってゆく。
流星隊としてのライブがもうすぐ控えているため、「真っ直ぐ家に帰るように」とリーダーである守沢千秋からは言われているのだが。
奏汰にとっては、それよりも約束の方が大事なようだ。
しばらくすると、静かな通りを抜けて、海の景色が見えてきた。
その景色を見るだけで、奏汰のテンションは上昇してゆく。
降り注ぐ日差し、押し寄せる波、遠くなってゆく蝉の鳴き声。
奏汰は迷わず砂浜へと歩き出した。
サクサクと足元が小さく音を立てる。
吹いてくる海風が心地良い。
海の目の前に、彼女はいた。
奏汰はAを見つけ、少し離れた場所から名前を呼んだ。
「A〜」
「えっ……深海くん？」
Aは心底驚いた様子だった。
本当に今日も来てくれるとは思っていなかったのだろう。
いつもと同じくにこやかな奏汰は、海辺に座るAの横に腰掛けた。
彼女の白いワンピースの裾には、少し砂がついていた。
そして、もう全身が水に濡れてビショビショになっていた。
奏汰が来るまで、待ちきれなかったのだろうか。
「ふふふ、こんにちは〜」
「こんにちは！今日も、来てくれたんだね」
「はい。『またあした』、と言われたので」
奏汰の言葉に、Aは目を丸くした。
半分口をついて出たような言葉なのに、奏汰は律儀にも覚えていて、こうして海に足を運んでくれた。
濡れたAの頭を、奏汰は優しく撫でる。
黒い髪の先から垂れ落ちる水滴は、彼女の白い腕に新しい水玉を作ってゆく。
「もう、『みずあび』をしてしまったのですか？Aは『せっかち』さんですね〜」
「……えへへ。ちょっと待ちきれなかったや」
「そうなんですか〜。では、ぼくとまた、ぷか、ぷかしましょう」
Aの手を取って、奏汰はパシャパシャと水を跳ねさせながら海へと入った。
自然と取られてしまった手に、彼女の顔はわずかに紅潮した。
彼女は奏汰が男だから照れているのか、それとも。
そんなことを、彼は知る由もなかった。
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うーちゃん - 感動しました！！儚い恋ですね☆ (2016年9月14日 20時) (
レス) id: 822060fcb6 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - あ、、泣きました…。すごくいい話で…完結おめでとうございます！！ (2016年8月19日 17時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 菜舞さん» わ〜〜ありがとうございます（ ; ; ）儚い感じを目指しているので、そう言っていただけると本当に嬉しいです…！ (2016年8月11日 22時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - こんなに素敵な小説初めて見ました！！！儚い感じがすごく好きです… (2016年8月11日 21時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 湊朔さん» ありがとうございます！まだまだ未熟ですが、もっと魅力的な世界観を目指して頑張ります！（ ; ; ） (2016年8月10日 9時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺり | 作成日時：2016年8月9日 15時
