Day.5-3 ページ16
そのままずっと歩いていると、砂浜の終わりに辿り着いてしまった。
もうこれ以上進めない、とAは砂浜に腰を下ろした。
白いワンピースはすっかり汚れてしまっていた。
砂と、消えることない海水の水玉模様。
風が水に濡れた肌を撫でる。
少々寒いくらいだが、彼女は特に気にかけていない。
ここにはひとりしかいない。
世界は彼女だけのひとりきり。
呟く声も、誰も答えずただ響くだけ。
悲しくなってAは目を閉じた。
周りを見ても同じ景色ばかり。
いくら海が好きだとはいえ飽きてしまう。
Aは自分の体を両腕で抱きしめた。
体は相変わらず冷え切っていた。
あぁ、彼の、奏汰の温かさが愛おしい。
どうしても彼に会いたかった。
「なんでこんなにつらいんだろうね」
「……誰も答えないよね」
「寂しいよ、本当に」
「今までそんなこと感じなかったのに」
「気にしないふりをしてただけなのかな」
「でも嬉しかったんだよ」
「嬉しかったんだよ……奏汰くんが、ここに来てくれたことが」
「本当はいけないのに」
誰に話しかけてるわけでもない声は、虚しく風に吹かれて消えてゆく。
弱々しくなった彼女の声は、すぐになくなってしまった。
「寂しい、寂しい、寂しいよ」
「奏汰くん」
「……口に出すだけでこんなにドキドキするんだね」
「ごめんね、好き、大好き、奏汰くん」
彼女の口から、ボロボロと言葉が溢れ出す。
誰かに語り聞かせるような、自分に言い聞かせているような口ぶりで。
彼女はいつから好きになっていたのだろう。
もう遠い昔のことのようだ。
初めて海で溺れている奏汰を助けた時から、全てが始まっていたのかもしれない。
濡れた水色の髪、綺麗なエメラルド……穏やかな彼が、頭から離れなかった。
ふと、昨日の奏汰の顔が浮かんだ。
少し赤くなった顔……よく考えたら、少し具合が悪そうだったような？
そう思い込んでしまってからは早かった。
不安がどんどん湧き上がってくる。
「どうしよう」
Aの顔からサーッと血の気が引いた。
元々白かった顔は、さらに青白く染まる。
自分の手を見ても、顔に触れても、特に変化は感じられない。
冷たい、自分の肌がペタリと手に吸い付く。
「私は、奏汰くんに……？」
怖くなって、ギュッと目を閉じた。
今は彼女にしかわからない別れの予感が、徐々に迫っていた。
……ふたりが出会って、5日目。
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うーちゃん - 感動しました！！儚い恋ですね☆ (2016年9月14日 20時) (
レス) id: 822060fcb6 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - あ、、泣きました…。すごくいい話で…完結おめでとうございます！！ (2016年8月19日 17時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 菜舞さん» わ〜〜ありがとうございます（ ; ; ）儚い感じを目指しているので、そう言っていただけると本当に嬉しいです…！ (2016年8月11日 22時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - こんなに素敵な小説初めて見ました！！！儚い感じがすごく好きです… (2016年8月11日 21時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 湊朔さん» ありがとうございます！まだまだ未熟ですが、もっと魅力的な世界観を目指して頑張ります！（ ; ; ） (2016年8月10日 9時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺり | 作成日時：2016年8月9日 15時
