Day.4-2 ページ12
「奏汰くんは、海だけじゃなくておさかなさんも好きだったんだね」
「はい。ぼくは『かいようせいぶつぶ』にはいっているんですよ〜」
「海洋生物部なんてあるんだ！」
聞いたことがなかった珍しい部活の名前に、Aは目を輝かせた。
その頭の中では、どんな部活なのだろうと思案を巡らせているのだろう。
奏汰は部活に興味を持ってもらえたことが嬉しいのか、同じく目を輝かせた。
砂浜に並んで座り、空を見上げた。
「『かいようせいぶつぶ』は、ぼく、かおる、そうま……さんにんの『ぶかつ』なんですよ」
「具体的には何をするの？」
「おさかなさんの『おせわ』をしたり、あと、そうまはたまにおさかなさんの『りょうり』をつくってくれますね〜。かおるは、たまに『かお』をだしてくれます」
「あ、おさかなさん、食べちゃうんだ……」
「おさかなさんは、『からだ』にいいですから〜」
静かな海を見つめる。
先ほどまで魚たちで盛り上がっていた海とは思えないほど、穏やかに波が迫っている。
しかし天候が良くないせいか、穏やかとはいえいつもよりは荒れている。
それを見ていたAが、不意に立ち上がった。
「奏汰くん、今日は早く帰った方がいいよ」
「どうしてですか〜？」
「天気が悪いからさ。あんまり海も機嫌がよろしくないみたいで……」
「そう、みたいですね」
奏汰は途端に悲しそうな表情になってしまった。
Aはなんて声をかけたらいいかわからず、ただ奏汰を見つめていた。
不意に、奏汰が立ち上がったままのAの手を掴んだ。
何事かと彼を見ると、いかにも寂しいという気持ちを前面に出した顔をしていた。
垂れ下がった眉と綺麗な瞳、彼女は思わず可愛いと思ってしまった。
奏汰の瞳の中には、きっと頬を赤らめたAが映っているのだろう。
「かえるまで、いっしょにいてくれますか……？」
甘えるような声に、いいえとは言えなかった。
最も、彼女はいいえなんて言うつもりはなかったのだが。
「もちろん、一緒にいよう」
優しく手を握り返す。
彼女も立つことをやめ、奏汰の隣に座った。
奏汰は繋がれた手をほどき、指を絡めた。
離れないように、手探りで冷たい彼女の中の熱を探すように。
ドキドキしてしまうのは私だけなのだろう、とAはぼんやり考えた。
ふと、彼女は今なら何でも許されるような気がしてしまった。
「奏汰くん」
俯きがちな彼の唇に、近づくように迫った。
奏汰は何もしようとしなかった。
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うーちゃん - 感動しました！！儚い恋ですね☆ (2016年9月14日 20時) (
レス) id: 822060fcb6 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - あ、、泣きました…。すごくいい話で…完結おめでとうございます！！ (2016年8月19日 17時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 菜舞さん» わ〜〜ありがとうございます（ ; ; ）儚い感じを目指しているので、そう言っていただけると本当に嬉しいです…！ (2016年8月11日 22時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
菜舞(プロフ) - こんなに素敵な小説初めて見ました！！！儚い感じがすごく好きです… (2016年8月11日 21時) (レス) id: 0a934d2445 (このIDを非表示/違反報告)
ぺり - 湊朔さん» ありがとうございます！まだまだ未熟ですが、もっと魅力的な世界観を目指して頑張ります！（ ; ; ） (2016年8月10日 9時) (レス) id: 6abc9b85c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺり | 作成日時：2016年8月9日 15時
