Twenty-six ページ28
彼らが密かに計画を立てているとは露知らず｡
Aはいつの間にかマスト細胞の腕から脱出していた｡それもマスト細胞が気づかぬ内に｡
「お話には伺ってましたけど、楽しい方達ですね」
楽しいという言葉で片付けてしまうには随分愉快すぎる気もするが、まあそういうことにしておこう｡
「ちょっと記憶さん」
B細胞に呼ばれて、記憶細胞は一旦Aの元を離れた｡
「なんだ? 」
「いや、あの……」
B細胞の声は小さくて、Aまでは届かない｡
結果的に蚊帳の外に追いやられてしまったAはボーっと記憶細胞達を見ていた｡
B細胞とマスト細胞｡2人ともすごく整った顔立ちの持ち主、云わば美男美女である｡仲がいいと言えるかは微妙だが、2人が並んでいるだけで様になる｡
そんな輪の中へ、これまた顔のいい記憶細胞は行ってしまった｡
とてもじゃないけれど、あの中に自分は入っていけない｡
Aはそう思ってしまう｡
だってマスト細胞さん、美人さんだし……｡
とても女性らしい方だとAは感じていた｡
肌は潤いを保っているし、ハイヒールやスカートを身に付けてしかも似合っていて｡
何より艶やかな長い黒髪｡どれくらい入念に、そして丁寧に手入れを施しているのか｡
Aは自分の格好をざっと見た｡そして思った｡
私とは何一つ違うのだ、と｡
この姿を自分で選び、それで満足していたとしても｡記憶細胞がAを可愛いと言ってくれたとしても｡自分の容姿に自信が持てないAは、やはり少しだけ気になってしまう｡
記憶さんはマスト細胞さんみたいな綺麗な方が好みなんじゃないかって｡
「A」
記憶細胞に呼ばれたことで、Aは長く深い思考の海底から顔を出す｡
記憶細胞が手招きをしてAを待っていた｡
おずおずとそちらへ近づき、記憶細胞の斜め後ろにそっと立った｡
隣に立つなんておこがましいように、今のAには思えたのだ｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年3月8日 17時
