肆拾参。 ページ44
【無一郎Side】
「天元さん、私も連れて行ってください。女装するにしても男子だと不備があるかもしれません」
「いや、でも……。お前が後悔するかもしれねえぞ。いいのか?」
「何の事か分かりませんけど……。場所がどこであろうと、行きます。一体でも多く鬼を殺すのが私の仕事ですから」
「……そうか!じゃあ、ついてきな!」
「ちょっと待ってよ。どこに連れて行く気?」
『!!……無一郎くん……』
会話を聞いていると、なんだかAがよくない場所に行くみたいだった。
なんか、嫌な予感がする。
「場所か?……遊郭だよ。吉原のな」
「は!?」
遊郭。夜の街だ。一度だけ、任務で近くを通ったことがある。
そんなところにAを行かせる?冗談じゃない。
金でものを言う糞みたいな男どもが、Aをいやらしい目で見るんだろう。
「許すわけないでしょ。もし間違いがあったら、どう責任取るつもり?」
『間違い?間違いって何?』
やっぱり。全然わかってない。
「もし万が一にでも、Aが傷付けられたらってこと。詳しくは言わないけど、夜の街だってことで察して」
『……? 私、そこらの男の人よりは強いと思う。大丈夫だよ?』
こんな純粋な人、遊郭なんかに連れて行ったら駄目だろう。
後ろにいる金髪の隊士はどういう意味か分かって顔を赤くしたというのに、訳がわからずきょとんとしている。
「宇髄さん、Aを連れて行くのは諦めてください。どうしてもって言うなら僕を――」
『……っ、いいって!無一郎くんには関係ないでしょ!?放っておいて!』
突然、Aが大きな声を出した。宇髄さんも知らない隊士三人も、驚いてAを見る。
『!! ……ごめん、無一郎く――』
「いいよ。確かに、僕が色々言うことじゃないよね。行ってらっしゃい」
『でも』
「いいから、早く行きなよ。任務でしょ?」
『……うん。行ってきます』
「話はまとまったか?じゃあ行くぞ、野郎共!」
「……はい」
「あ、はい!」
「あ〜、嫌だ行きたくないいいい!」
「グワハハハハ!腹が鳴るぜ!」
「“腕がなる”だろ……」
騒がしく一行は去っていった。
Aは最後まで、無表情を貫くと思っていた。
それなのに――。
今まで散々無表情を貫いてきたくせに、こういう時ばっかり辛そうな顔。苦しそうな顔。……なんでそんな顔するんだよ、馬鹿A。
自分から突き放したのに。
僕はただ、Aに笑っていてほしかっただけなのに。
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わらび餅 - あおいさん» 本当に何回も、ありがとうございます!すっごく嬉しいです! (2020年3月6日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 題名、変わりましたね!とっても素敵です....!続きがめっちゃ気になります。次の更新も楽しみに待ってます! いつもの長文野郎より。 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 4eed4f74a9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 萌葱なごみさん» えええ……マジですか!?全然出てこないんですけど、もしかしてスマホのスペックが低いんしょうか……。何か他の読み方は知りませんか? (2020年3月1日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - しまと打って探せば出てきます! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - 嶼ですよ! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月9日 20時