肆。 ページ5
「夜桜!先程から気になっていたんだが、君は何故常中を会得しているんだ!?」
『あ……。私の育手の人たちが教えてくれたの。二人には置き手紙を残してきたけど、少し申し訳ないことをしたかもしれない』
「……夜桜は既に剣士だったのか!」
剣士、というのも少し違う気がする。
私の想像する“剣士”は、溜め息の出るような美しい剣撃で人を救う人たちだ。
私はただ刀を振っているだけだし、まだ人の命なんて救ったことがない。剣士に憧れている人、と言ったほうが正しいと思う。
『杏寿郎さん、まずは何を教えてくれるの?』
「すまないが夜桜、俺が教えることはできない!知り合いに強い育手がいるから紹介しよう!その者の所で修行を積み、必ず入隊するんだ!」
『…………うん』
杏寿郎さんが教えてくれると思ったのに。
「正式に隊員となったら、俺が稽古を見てやろう!だから、必ず最終選別に生き残るんだぞ!」
『もちろん。楽しみにしてるね』
……思っていたよりも、私は冷静さを保っていた。家族を失ったけど、それでも泣いたりしない。
悲しみ、というよりは、怒りの方が大きい。
あんな醜い生き物に幸せを壊された。思い出すだけでも吐き気がしてくる。
鬼は仇だ。
家族を殺した鬼は既に死んでしまった。だから怒りの矛先が鬼全体に向くのは、当然のことだと思う。
『杏寿郎さんはどうして鬼殺隊に入ったの?』
「俺の家は代々、鬼殺隊の炎柱を生み出してきた一族なんだ!……柱は分かるか?」
『ううん。初めて聞いた』
「柱というのは、鬼殺隊最高位を示す位だ!水の呼吸の剣士が柱になった場合、階級は“水柱”になる!炎の呼吸は“炎柱”、岩の呼吸は“岩柱”だ!」
『へぇ……。杏寿郎さんは柱じゃないの?』
「俺は、あと少しすれば炎柱になる!今はまだ“甲”だが、必ず柱になって多くの人の命を救うつもりだ!」
さっきの剣技を見て思った。
なんて綺麗な太刀筋。
無駄のない、洗練された動きなんだろうって。
『私、分かるよ。杏寿郎さんは必ず炎柱になって、たくさんの人を救うって』
少し話せば分かる。
杏寿郎さんがどれほど優しい人なのか。
こんなにも強くて優しい人が死ぬなんて、考えられない。神様はちゃんと見ているはずだから。
「ありがとう!夜桜は優しいな!」
『そんなことないよ。私は、杏寿郎さんみたいになりたい。強くて優しくて、人を救える人になりたい』
きっと、なれる。
死ぬ気ですれば、何だってできるはずだ。
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わらび餅 - あおいさん» 本当に何回も、ありがとうございます!すっごく嬉しいです! (2020年3月6日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
あおい - 題名、変わりましたね!とっても素敵です....!続きがめっちゃ気になります。次の更新も楽しみに待ってます! いつもの長文野郎より。 (2020年3月5日 21時) (レス) id: 4eed4f74a9 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 萌葱なごみさん» えええ……マジですか!?全然出てこないんですけど、もしかしてスマホのスペックが低いんしょうか……。何か他の読み方は知りませんか? (2020年3月1日 20時) (レス) id: eec3d5a46f (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - しまと打って探せば出てきます! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
萌葱なごみ - 嶼ですよ! (2020年3月1日 18時) (レス) id: be00a3fd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:karin | 作成日時:2020年2月9日 20時