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このところ、デビルズパレスの敵は多い。倒しても、倒しても、キリが無いくらい。…そして今、ルカスを呼ぶくらい切迫詰まってるんだ。
私の目の前にいるラムリはいつも通りあっけらかんとしていて、疲れも緊迫感もとても感じさせないけど。
「ごめんね、主様。少し部屋を留守にするけど、いい子で待っていてくれるかな?」
素直に頷くことなんて出来なかった。守られてるだけなんてもう嫌だ。…彼らだけが傷付いて、どんな傷を受けたのか、計り知ることも出来ないなんて。
私だけが、綺麗なままでいるなんて。
「ルカス、私も行く」
「えぇ…っ、ちょ、主様!?」
ダメです、絶対ダメですってば、と慌てるラムリの声が遠い。
…だって。
私だけが無傷でいるなんて、嫌だ。
「主様」
抑揚のないルカスの声がする。騒いでいたラムリの声が止まって、きゅっと心臓が握られる強い感覚がした。
「お薬、入れられたくないよね。……いい子にして、待てる? 主様」
青褪めたラムリの表情を見て、曖昧に、何を言われているのかを理解した。耳に、入ってこない。真っ白な頭が、逆らうことを忘れてこくこくと頷くだけ。
「いい子だね♪」と撫でられるのが、また、自分に情けなくなった。
「大丈夫だよ、すぐに戻ってくるから♪ ……そしたら、ちょっとお話しましょうか」
「う、ん…」
淡々とそれだけ言って、ルカスは部屋を後にして行った。追いかけて行ったら後で酷いことになるだろう。そんな事を考える自分も情けなくて、膝が崩れそうになる。
「主様…」
傷付けさせたくなかった。傷付いてほしくなかった。…でもやっぱり私は、何も出来ない。
「…ラムリ」
「主様ぁ、主様はあんなの見なくていいんですよ。いつもみたいに笑ってくれたら、それで。そしたらボクは何も要らないから……」
だから、ね?
そうやって笑う貴方を、本当はどうしたら守れたんだろう。何をやったって、私には無理だったのだろうか。
彼の頬に手を伸ばして、血を拭う。きょとんとした顔は、血が付いているのも全くの無自覚だったらしい。
「…ダメですよ、そんなのに触っちゃ」
みんなだって、ダメだよ。そう言いたかったけれど、悪夢を見たかのように眉根を寄せて私の手を取る彼を見たら、そんな言葉は喉から堕ちてしまった。
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