at close range (ページ10)

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passionate gaze 3【Y】ページ10

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体育館から小走りで立ち去ると、正門にもたれて携帯をいじくる後ろ姿が目に入った。

胸が高鳴る、と言えば聞こえはいいけれど、好きな人と会える高揚感とは少しだけ違う。

「ごめんなさいっ、待った？」

急いで駆け寄り、即座に謝罪。

部室で何時間も待っていたのは私。

鳴らない携帯握りしめて、何日間も連絡を待っていたのは私。

でもそんな不安や不満は微塵だって感じさせちゃいけない。

振り向く彼の表情を瞬時に伺う。

「ちょっとだけ」

あぁ……、良かった

機嫌いい

こんな安心感で実感する恋心を、人は"哀しい"って言うかもしれない。

こんなに我慢ばかりの付き合いを、人は"間違ってる"って言うかもしれない。

それでも私は、

「今日はどこ行きたい？ご飯何か食べたいのある？」

目の前の彼に、恋をしている。

「んー……、お前んちは？親いんの？」

そっか

今日はご飯より先か…

ただ少しだけ迷った素振りをしてくれた。

それだけで、嬉しかった。

「親はいないよ！じゃあ家でまったりしよっか」

この人が求めているものは私の温もりじゃない。

でもね、こうして繋がれた手を離すことなく、ぎゅって握りしめるの。

今だけは、私の存在を感じて欲しくて。

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五月、初夏にはいった日曜日。

その日はやたらと練習が厳しかった。

みんなの嫌いなフットワークばかりが続き、体育館内の温度は上がりっぱなし。

ただ立っているだけの私でさえ、さっきから汗がとまらない。

ピィーーーーーーーッッッ

「おい横尾っっ！！！！お前何さっきから誤魔化してんだよっ！やる気ないなら帰れ！！」

甲高い笛の音に続き、顧問の先生の怒声が体育館中に響く。

いっせいに部員たちの注目を集める先には、膝に両手を当て、肩で苦しげに息をする横尾くん。

そんなはずない

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