passionate gaze 4【Y】 ページ11
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どれだけキツくても、どれだけ苦しくても、横尾くんは絶対に手を抜かない。
50本ダッシュの数を誤魔化したりもしないし、シャトランも絶対にラインをきっちり踏むんだ。
横尾くんはしばらく呼吸を整えて、やっとのことで顔を上げた。
顔色……、悪い
「大丈夫です。すみません」
ふらりとスタートラインに戻ろうとするから、次の瞬間、思わず大声をあげていた。
「先生っ!横尾くん今日早退なんです!!!私に届け出てたんですけど、先生に言いそびれちゃってました!!!すみません!」
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私に手首を掴まれ、無言のまま部室までやって来た。
しっとりと汗ばんだ肌は驚くほど冷たい。
「大丈夫?帰ったらお家の人いる?」
「誰が早退するって?」
「だってそうでも言わないと横尾くん続けちゃうと思ったから」
「余計なことすんなよ」
「ふふっ、言われると思った」
至近距離で、私を見つめる視線には、やっぱり熱がこもってる。
「でも横尾くんはちゃんと私についてきた。振りほどかなかった。それは何で?」
その眼差しに被せるようにして、私は少しだけ笑ってみせた。
そうでもしないと、私は彼を傷つけてしまう。
「無理したら長引くよ?」
「っせーよ、先輩ズラすんなよ」
「ズラじゃなくて先輩です!ってか、マネが部員の心ぱっ…」
突然腕を引かれて前にのめった私に、横尾くんはキスをした。
強引で、乱暴で、不器用で、
でも、私の気持ちを探るようなキス。
不意に懐かしいと思った。
あの人も、初めはこんな風に、私の気持ちをちゃんと、探してくれていたんだよ。
「なんでお前が泣くの?」
「……ごめっ…」
「そんなにアイツが好き?」
「あのっ……」
「俺、」
もうすぐ17歳になる彼は
「お前なんかと会わなきゃ良かった」
思いつめたような真剣な眼差しでそう言った。
敵うはずがない。
こんなに真っ直ぐ恋をしている彼に、計算ばかりの恋をしている私なんかが敵うはずがないんだ。
パッと視線を外し、うつむく。
どうしようもなく涙が溢れて、どうしようもなく、苦しかった。
「先輩、」
静かな声で、横尾くんから初めて呼ばれた " 先輩 " は、おそらく彼の、恋の終わり。
「ずっと、ずっと、…好きでした」
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【end】
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時