fireworks 10【Ki】 ページ40
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━━━ 三年後
「んー？なぁーんかいつもよりみんな静かだなぁー、いつも通りでいーんだぞ〜」
朗らかに笑う担任の柳田先生につられて、私を含め何人かの保護者が笑った。
「よしっ、では珍しくぱりっとした雰囲気で始めたいと思います。もうすぐ父の日ということで、みんなに書いてもらった作文、ちゃんと手元にあるかー？」
え、
「では、『僕の私のお父さん』。順番に読んでもらいたいと思います」
先生の話しを聞きながら、まるで自分も生徒になってしまったかのように緊張が走る。
三年前、新たに始めた三人での生活はとても順調だった。
宏くんの優しさと大らかさに助けられ、晴人の素直さと無邪気さに救われて、宏くんが私たちのもとへ持ってきてくれた"いいこと"は、確実に晴人の小さな隙間を埋めてくれた。
穏やかに、ささやかに、小さな幸せを毎日感じていたんだ。
でも、晴人が宏くんを" お父さん "と呼ぶことは一度もなくて、また、宏くんも呼ばせることはしなかった。
僕のお父さん……、
晴人の作文は、どんな気持ちで埋まっているのかな…、？
多種多様なお父さんたちが、様々なエピソードとともに次々発表されていく中、私は気が気でなかった。
過ごしてきた三年間に自信が無いわけではないけれど、どこか二人に対して、私自身、拭いきれない後ろめたさがあったのかもしれない。
「次はー、北山」
合格発表の前のように、ぐっと、気持ちを固めた。
「はい、…僕のお父さん、二年三組、北山晴人。
僕のお父さんは本当のお父さんではありません。でも僕は、北山宏光が大好きです。
ピーエス！
できれば僕は妹が欲しいです。理由は、温泉とか、いつも僕と宏光がチームでママが一人になっちゃうからです！！！………終わり！！！」
教室全体がたった数行の作文に度肝を抜かれる中、私は流れる涙を我慢することができず、両手で顔を覆ってしまった。
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" 今日の授業参観どうだった？ "
" 晴人は笑ってた？ "
" 俺も行きたい。ずるい "
朝から何度も受信する宏くんからのメール。
何から話そう
今日の日のことを
持ち帰った作文を見れば、空いたスペースには、あの日の赤い花火が大きく描かれていた。
【end】
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作者名：ななは | 作成日時：2018年7月28日 1時
