sleet 4 【Y】 ページ4
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「だっ、だって……、私まだ、仕事だってアシスタントだしっ…、自分でいっぱいいっぱいだし…」
「うん」
「わたっ…だって…そっ、でしょ…？急にっ…困る、でしょ…？それに私、わたしっ……」
「いいよ、全部話して」
「妊娠しました、なんて…、急に……、お荷物みたいでやだったのっ……、渉の人生の邪っ……」
ぎゅーって、優しく遮られる。
「あー…、やっぱおしまいっ」
苦しい
まるであの時みたいだ
真っ赤なくせして
とてつもなく怖い顔して
"俺と付き合って下さい"って
言ってくれたときみたいに
嬉しくて、すごくすごく、苦しいよ
「Aの夢は？」
「……美容師に、なること」
「あとは？」
私を覗き込むように渉が優しく笑うから
その瞳が
触れ合う体温が
伝えてくれる言葉が
私を素直にする
私を可愛くする
私を、母にする
「ママになりたい…」
「ん」
「この子のママに、なりたい…」
昨日はこれでもかってほど飲むつもりだったの
飲んで楽になりたかったの
ほら、こんな悪いママのとこは嫌でしょ？って
赤ちゃんに言いたかったの
でも、できなかった
渉の胸の中。
薄っぺらい胸の中。
気づかれにくいけど
すごく、すごく…
あたたかいんだよね
何度だって抱きしめて、何度だって抱きしめられたい。
「俺の夢はね、和食の店を出すこと」
「……うん」
「あと、こいつの父親になること」
「…ん」
「贅沢かもしれないけど、二人の夢、四つとも叶えない？」
こみ上げる嗚咽は、簡単に私の返事をかき消して。
でも早く伝えたくて、渉の胸もとで何度も何度も頷いた。
渉は嬉しそうに、再び私を抱きしめる。
ぎゅーって強く。
「大切にする、二人とも」
.
「…やっばっ！！！腹は！？へーき？」
渉が慌てて身体を離すから、思わず笑ってしまう。
「まだ全然大丈夫だよ。浴衣だって着たんだよ？」
「あぁ、それもマジでムカついてたから」
あぁ、
だから機嫌悪かったんだ……
「もう明日からワンピース以外着んな。あと人混み避けろ」
実はとっても心配性で、少し押し付けがましいけど、刻まれる眉間のシワの奥は、優しい気持ちと愛情で溢れてる。
来年は三人で、綺麗な花火をみようね
【end】
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作者名：ななは | 作成日時：2018年7月28日 1時
